本研究では,マグネシウム合金鋳造材における摩擦攪拌プロセス(以降,FSP)を用いた析出の促進ならびに難燃性等の諸特性向上を目的として,それぞれに効果的に機能する微細粒子の作製ならびに添加技術を開発し,熱処理の効率化ならびに材料特性の改善を目指して検討を実施した. 昨年度までは,アルミニウムを13mass%含有するマグネシウム-アルミニウム微細粒子をFSPによりAM60マグネシウム合金中に添加した際の時効硬化挙動について検討した.その結果,微細粒子を添加した試料ではFSPに伴う結晶粒微細化とアルミニウム濃度の増大に起因した固溶強化によりFSP直後の強度(硬さ)が36%程度向上することを確認した.また,FSP後に時効処理を実施した場合,微細粒子を添加した試料では析出が開始する時効時間が約75%短縮した.微細粒子を添加していない試料では時効時間の延長に伴い析出相が粗大なラメラー状に成長する一方で,微細粒子を添加した試料では粒状もしくはアスペクト比の小さい板状に成長することが明らかとなった. 本年度は,時効特性の更なる改善を目的として①アルミニウムに加えてニオブを含有した微細粒子,②難燃性の改善を目的としてカルシウムを含有した微細粒子をFSPにより添加した場合に関して検討を行った.①ニオブを添加した場合,アルミニウムのみを添加した試料と比較してピーク時効時の硬さがごく僅かに増大するものの時効硬化能に明瞭な差異は確認されなかった.②カルシウムを添加した場合,アルミニウムのみを添加した試料と比較して燃焼温度が上昇することを実験的に明らかにすることができた.一方で,市販のカルシウム添加合金と比較するとその燃焼温度は低かった.FSPにより如何に均一な攪拌を実現するかが今後の課題と考えられる.本年度では研究成果の一部をまとめて2件の口頭発表を行った.
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