研究課題/領域番号 |
18K14036
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
夏井 俊悟 北海道大学, 工学研究院, 助教 (70706879)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 溶融塩電解 / コロイダルメタル / 高速顕微鏡観察 / 流体力学 / 熱移動 |
研究実績の概要 |
溶融塩化物中に電析した活性金属液滴を対象として、観測と計算を融合した高温分散系の力学的な検討を試みることが本研究の目的である。具体的には、673~873K、Ar雰囲気中における溶融LiCl-KCl-CaCl2共晶融体において、サブミリ秒スケールでMo作用極の電位制御を行い、同時に電流応答・界面形態・電極内部温度を時々刻々追跡することで、生成する液滴形状と流動メカニズムについて考察した。電解温度、組成によって電流値が大きく変わらない場合においても全く異なる界面流動が誘起されることを明らかにした。823K、LiCl-CaCl2系における定電位電解により、電析液滴群の周囲には特徴的なコロイダルメタル(CM)のネットワーク構造が自発生成した。長時間電解の場合には過大に析出したCMとネットワーク構造の凝集によってこの構造は崩壊する。電位が卑の方が同一電荷量でのセル直径が大きく、対流場が高速に生成することがわかった。電解初期では、電極上の液滴の合体は500μs以下の時間スケールで完了するため時間因子の考慮は排除できる。したがって電位によって界面張力が異なることで安定な液滴径が変化すると考えるのが自然と考えている。これについては、現在、Lagrange的な数値流体シミュレーションに基づき、固体表面上の2融体界面流動を界面エネルギーバランスのみならず三重線上の転動や滑動まで詳細に記述することを試みている。CMの凝集構造は、系全体として収縮しようとしているが、連結性から縮むことができず自発的に生じる応力を蓄えることになると思われる。この駆動力として、電解反応による急激な温度勾配あるいは濃度勾配が考え得るので、局所的なMarangoni-Benard対流の観点から考察を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
溶融塩電解の電気化学測定における電位-電流応答で出力されるいわゆるマクロスコピックな平均化された情報の中から、本提案手法によって直接観察と高速測定によって詳細な時空間情報を取得できたことは新しい成果と言える。
|
今後の研究の推進方策 |
本系において、電解中の電極界面に局所的なMarangoni-Benard対流が生じていると仮定して、熱物質移動の観点から考察を行う。これは界面張力勾配による対流である。単純化した1次元の流体力学モデルを作成して計算したところ、電極界面上に0.1mN/m程度の界面張力差が生じたとしても0.4mm/s程度の流速が生じることが示唆された。この流速に起因した流動は、電極付近での混合過程に効果的な寄与をもたらすことが期待される。電解中の詳細な熱測定を実施して電極界面における温度勾配を定量化したい。一方で物質移動を無視しているため、実際はこの単純なモデル通りには反応と流動は進行しない。今年度は、同時に多くの因子を考えるための数値モデル実験も実施する予定である。
|