溶融塩化物中に電析した活性金属液滴を対象として、高温分散相の力学的な特性を詳細に追跡することを試みた。673~873KのAr雰囲気中における溶融LiCl-KCl-CaCl2共晶融体において、サブミリ秒スケールを最小時間単位として、Mo作用極の電位制御を行い、電流応答・界面形態・電極内部温度を時々刻々追跡し、生成する分散相形態と流動メカニズムについて考察した。電解温度、組成によって電流値が大きく変わらない場合においても全く異なる流動が誘起されることを明らかにした。特に、823K、LiCl-CaCl2系における定電位電解では、電析液滴群の周囲には特徴的なコロイダルメタル(CM)のネットワーク構造が自発生成することが見出された。同一印加電荷量でも卑な電位の方がセル直径が大きく、界面での対流場が高速に生成することがわかった。電解初期では、電極上の液滴の合体は500μs以下の時間スケールで完了するため、セル状流れにおける液滴移動の影響は無視できる。したがって電位によって界面張力が異なることで安定な液滴径が変化すると考えるのが自然と考えている。これについて、Lagrange的な数値流体シミュレーション(SPH法)に基づき、固体表面上の2融体界面流動に関する運動方程式を解いて解析した。三相の界面エネルギーのバランス、三重線上の転動や滑動まで考慮した。CMの凝集構造は、系全体として収縮する方向に力が働くが、CMの連結性が保持されることで縮むことができず、自発的に生じる応力を蓄えることになると思われる。この駆動力として、電解反応による急激な温度勾配あるいは濃度勾配が考え得るので、局所的なMarangoni-Benard対流が電解界面付近で生じると仮定すれば、ごく小さい界面張力勾配でもこのようなセル状流れが生成する可能性がある。
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