研究課題/領域番号 |
18K14037
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大内 隆成 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (50555290)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 貴金属 / リサイクル / 乾式プロセス / 溶融塩 / 電気化学 |
研究実績の概要 |
白金族金属(Platinum group metals, PGM)は、希少性が高く化学的安定性に優れることから、宝飾品や貨幣のほか、投資目的の地金としても用いられている。さらに、その耐酸化性および触媒活性から、自動車の排気ガス処理触媒や工業用触媒として使用される。また、磁性材料や、創薬などにも応用されている。これらのPGMの需要は、我々の生活水準の向上、クリーンテクノロジーの導入に伴い、益々増加すると予想される。一方で、これらの貴金属の天然資源は、南アフリカやロシアなど限られた地域に偏在しており、我が国の安定的な資源供給のためには、使用済みの自動車用触媒や電子デバイスからの回収プロセスが極めて重要である。 スクラップ中のPGMの含有濃度は合計でも数千ppm程度と低いため、溶銅や溶鉄などの抽出剤(コレクターメタル)によって濃縮処理したのちに分離・回収するのが一般的である。その後、貴金属を含む合金を水溶液中での湿式処理により、溶解・相互分離・精製している。PGM は化学的に安定である(イオン化エネルギーが大きい)ため、水溶液中へ溶解するには、強力な酸化剤(イオン化剤)を要する。さらに、PGM は水溶液中での化学的性質が類似しているため、その相互分離には多段かつ複雑な工程が必要である。そのため、強力な酸を含む有害廃液を多量に発生するという問題がある。従って、PGM のリサイクルにおいては、簡便で有害廃液の低減を可能とする革新的プロセス設計が求められている。こうした現状を踏まえ、本研究では、イオン化する工程を湿式(室温の水溶液系)から乾式(高温の溶融塩系)へ変更し、簡便で有害廃液の発生のない、効率性と環境調和性を兼備した新規リサイクルプロセスの開発に取り組んでいる。本年度は、イオン化処理にいて、文献調査、ならびに実験的検証により評価・検討するとともに、反応を評価するための電気化学セルの設計・構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、白金(Pt)および金(Au)について、乾式処理および溶融塩への溶解に関する基礎的実験を行った。本年度は、乾式処理に使用する設備の整備や条件設定を行った。また、電気化学的に溶解現象を解析するためのセルの設計・構築を行った。これらの設備を利用してPtおよびAuについて溶融塩への溶解現象を電気化学的に解析することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
貴金属の溶融塩への溶解に関するメカニズムの解明・解析に取り組む。今後は、電気化学的視点から事象の解析・考察を迅速化し、化学状態分析と組み合わせることで、開発した新技術を用いた際に生成する貴金属化合物の溶融塩中での化学状態を明確化し、工学的知見のみならず学術研究として掘り下げた調査も行う。また、溶解した貴金属の溶解度および析出反応の速度論的の評価に取り組む。元素同士の電子授受および物質輸送に関する速度論的パラメータは異なることから、それらを系統的に測定し比較検討することで、高効率で分離能の高いプロセス設計を目指す。さらに、開発した手法を、他のレアメタルのリサイクル技術へ応用し、その有効性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属する研究室の電気炉・ガスラインの使用率が低く、代表者が使用できる設備が存在したため、次年度使用額が生じた。31年度は、所属研究室での電気炉の使用率が上がっているため、当初予定していた電気炉・ガスラインの整備を行う予定である。また、試薬および高純度ガス、実験ツール、旅費などに使用する予定である。
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備考 |
該当なし。
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