溶媒特性を柔軟に調整可能な新規溶媒の開発と、分子構造(親水基・疎水基のバランス)が水溶液の物性に与える影響を解明することを目的として、473.2 K、40 MPaまでの高温・高圧条件における2価アルコール水溶液を対象とした密度・粘度測定を実施した。1価アルコール水溶液のデータを含む既往のデータと本研究の測定結果を基に、過剰モル体積、混合粘度を求め、広い温度・圧力条件下においてアルコール分子の構造が、水、アルコール分子間の相互作用に及ぼす影響を評価した。その結果、高温・高圧条件(473.2 K、10~40 MPa)の2価アルコールは、1価アルコールとは異なり、水リッチ領域で過剰モル体積が正の値をとり、水和構造の形成を阻害する可能性があることを示した。また、本研究で測定した値を含む、常温・常圧から、高温・高圧条件までの密度・粘度に対し、CPA (Cubic-Plus-Association)状態式とEyring理論を組み合わせたモデルを構築・適用することで、密度・粘度の挙動を良好に相関できることを明らかにした。最終年度は、1価、2価アルコール水溶液の物性挙動に対して分子動力学シミュレーションからも解析を行った。その結果、高温条件において2価アルコール水溶液中では、水リッチ領域での水分子のネットワーク構造が1価アルコール水溶液に比べて大きく減少していることを明らかにした。また、これまでに構築したCPA状態式とEyring理論を組み合わせたモデルに含まれるパラメータの決定方法を改良することで、密度・粘度の相関精度を向上させることができた。
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