天然に豊富に存在するサステナブル炭素資源(CO2、バイオマス等)と安価な軽分子(H2、NH3等)との反応により高付加価値な化学品の合成を可能にする固体触媒プロセスを開発した。具体的には、下記の反応系における、反応開発、触媒開発、メカニズム解析を行い、成果を論文にて報告した。 (1)CO2/H2からのメタノール合成 (2)トリグリセリド、H2、NH3からのアミン合成 (2)のアミン合成反応では、特に顕著な成果が得られた。開発したZrO2にPtを担持した触媒(Pt(5)/ZrO2; Pt = 5wt.%)は本反応に対して極めて高い活性、選択性を示し、回収再利用も可能であることが分かった。また、本反応系はNH3を用いたCO2吸収法(CCS)により火力発電施設等で回収されたNH4HCO3をCO2およびNH3源に用いることが可能であり、CO2資源化の最大の課題である濃縮コストを低減できる。実用的にもメリットの大きい反応系である。 またこれら検討の中で、計算化学・情報化学を用いた新しい研究方法論の開拓も行い(触媒インフォマティクス)、触媒研究の効率化につながる知見を得た。固体触媒の設計理論は体系化されていない部分が多く、触媒探索の方法論は「絨毯爆撃的なスクリーニング」から未だに脱却できていない。本研究で、実験・理論・データ科学を用いて明らかにした固体触媒の構造-機能-性能の相関関係は、そのような状況を打破する一助となることが期待される。
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