Hf-Betaを含浸法によってポスト合成する際、フッ素を添加することによってハフニウムがゼオライト骨格内に導入されやすくなることを昨年度までに見出している。また、19F NMR分析によって含浸溶液内でフッ素がハフニウムと錯形成することが判明している。 本年度は、さまざまなフッ素を含むハフニウム錯体のNMR遮蔽をDFT計算によってシミュレーションし、含浸溶液内のハフニウム錯体として妥当な構造を推定した。ハフニウム-フッ素錯体の19Fケミカルシフトは、ハフニウムと結合したフッ素の数に依存して-200 ~ +100 ppmの範囲で変化した。フッ素が一つまたは二つ結合したハフニウム錯体は主に-60 ppm程度のケミカルシフトに観測されると予想された。NMR測定で主に観測された-65 ppmの化学種はこれらの錯体に帰属できると結論付けた。 また、含浸後のサンプルの固体19F MAS NMRを測定により、フッ素はハフニウムと結合したままゼオライトに含侵されることが示唆された。これらの知見から、含浸溶液内でハフニウムは主に一つのフッ素と結合した錯体を形成し、ハフニウムはフッ素化されたままゼオライトに含侵され、その後の焼成によって錯体が分解し、ルイス酸性ハフニウムが形成されることが明らかになった。 ハフニウム以外のチタン、ジルコニウムを含むゼオライトのポスト合成における添加フッ素の効果も検討した。Zr-Betaではフッ素の添加によって触媒活性の上昇がみられたが、その程度はハフニウムと比べて小さかった。また、Ti-Betaでは添加フッ素による明らかな変化はみられなかった。この傾向は金属とフッ素の錯形成能に起因しており、強く錯形成するハフニウムで添加フッ素による著しい活性上昇がみられた。
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