研究課題/領域番号 |
18K14055
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
朝倉 博行 京都大学, 実験と理論計算科学のインタープレイによる触媒・電池の元素戦略研究拠点ユニット, 特定講師 (40631974)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自動車触媒 / Operando / 遷移金属酸化物 |
研究実績の概要 |
CuとNiをAl2O3に担持した触媒をH2下,高温で還元して調製したCu-Ni合金触媒が三元触媒反応に高い活性を示した.模擬排ガスとして導入したNO-CO-C3H6-O2混合ガスが過不足なく酸化還元を起こす比率で含まれる化学量論条件(ストイキ条件)を基準に,酸素を数百ppm過剰あるいは不足条件に交互に変化させると,CuNi合金がそれぞれの酸化物とランダムな置換型固溶体をダイナミックに行き来していることがわかった. さらに,Niのみを担持した場合には酸化ニッケルが酸素不足条件でも還元されないのに対して,Cuのみを担持した場合には酸化銅が酸素不足条件下で還元される.すなわち,CuがNiの還元を促進しているものと予想された.そこで,反応中のCuNi合金触媒の動的な構造変化を明らかにするため,三元触媒条件下においてOperando XAS計測システムを用いて,CuおよびNiの酸化状態および局所構造を実時間で追跡した.その結果,CuNi合金系では酸素不足条件下でまずCuの還元が進行し,Cuの還元が完了すると同時にNiの還元が進行することがわかった.このことは,金属CuがNiOの還元を促進している,NiOを還元する中間体を精製しているなどの可能性が示唆している.この点について理論計算(共同研究)により,検討を進めた結果,Cu金属に接合したNiO界面のO原子がCOによる還元を受けやすいことが判明した.すなわち,遷移金属酸化物の固固界面における酸素の電子状態を制御することが易還元性の触媒の設計のキーポイントの1つであることを見いだした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請者はCu-Ni合金触媒が三元触媒反応に高い活性を示すことを見いだした.模擬排ガスとして導入したNO-CO-C3H6-O2混合ガスが過不足なく酸化還元を起こす比率で含まれる条件(ストイキ条件)を基準に,酸素を数百ppm 過剰あるいは不足条件に交互に変化させると,CuNi合金がそれぞれの酸化物とランダムな置換型固溶体をダイナミックに行き来していることがわかった.XRD,STEM-EDXなどの従来型の分析に加え,反応中のCuNi 合金触媒の動的な構造変化を明らかにするため,三元触媒条件下においてOperando 計測システムを用いて,Cu およびNi の酸化状態および局所構造を実時間で追跡した.その結果,CuNi合金系では酸素不足条件下でまずCuの還元が進行し,Cuの還元が完了すると同時にNiの還元が進行することがわかった.ここまで,計画通りに進行した.更に,理論計算(共同研究)により,検討を進めた結果,Cu金属に接合したNiO界面のO原子がCOによる還元を受けやすいことが判明した.すなわち,遷移金属酸化物の固固界面における酸素の電子状態を制御が易還元性の触媒の設計のキーポイントの1つであることを見いだし,当初の計画以上に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
SPring-8 に構築されたOperando XAS計測システムを用いて,模擬排ガスを用いたCuNi合金触媒あるいはRh/Al2O3, Pd/Al2O3 などのモデル触媒のOperando 測定を実施済みである.例えば,Rh/Al2O3のRhナノ粒子は酸化および還元過程の表面の変化速度が異なることを見いだしており,表面状態の重要性を再認識している.そこで,赤外分光装置を組み合わせ,X 線吸収スペクトルから推定される担持金属種の酸化還元状態および局所構造に加えて,触媒表面の構造変化および吸着種の構造および組成変化を追跡することで,より詳細な三元触媒反応の理解を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
微量元素の Operando XAS 分析に必要な蛍光 X 線用加熱セルの設計に時間を要したため,次年度へと繰り越した.2019年度に入ってから既に発注手続き中であり,7月頃より利用し,更なる成果を創出する.
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