研究実績の概要 |
自動車エンジンから排出される炭化水素や一酸化炭素,窒素酸化物などの有害物質は三元触媒を用いることで二酸化炭素および窒素へと変換・浄化されている.三元触媒にはRh, Pd, Ptなどの貴金属元素が利用されてきたが,資源の希少性の問題から卑金属元素への置き換えが期待されている.これまでにCuとNiを利用した二元系触媒が三元触媒反応に高い活性を示すことを見いだしている.しかし,貴金属触媒に比べて350度以下の低温領域で活性が著しく低い,また,酸化されやすい卑金属元素が反応中にどのように酸化・還元・凝集・分散しているか不明であるため,更なる高機能化の障害になっているという課題があった. 2019年度はCu-Ni触媒の低温領域における活性向上および反応中の触媒構造変化の解明を目指して研究を進めた.低温領域における活性向上のため,CuにNi以外の第二成分を組み合わせた二元系触媒およびCu-Ni触媒に第三成分を添加した三元系触媒の触媒活性を評価した結果,Cu-Ni触媒に第三成分としてFeを展開した系が高い活性を示すことを見いだした.Cu-Ni触媒はプロピレンの転化率の低さが問題であったが,Feの添加によりプロピレンの転化率が向上し,一酸化窒素の還元効率も向上させることを見いだした.このことは,炭化水素の吸着および酸化過程を促進することが低温領域での高活性化に重要であることを示している.一方,触媒反応中にX線吸収分光法を用いて卑金属元素の状態をリアルタイムで追跡した結果,酸素過剰条件下で酸化されたNiが,Cuの共存により酸素不足条件下に還元が促進されることを見いだした.この特長により,実環境の酸素濃度変動条件下においても高い活性が維持されることが期待される.これらの知見は卑金属系三元触媒の開発に寄与すると考えられる.
|