研究課題/領域番号 |
18K14062
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉本 将悟 名古屋大学, 工学研究科, 研究員 (90806291)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | オートトランスポーター / タンパク質 / 微生物 / 接着 / 吸着 |
研究実績の概要 |
グラム陰性細菌Acinetobacter sp. Tol 5はプラスチックやガラス、金属など様々な表面に対し強固に接着する。Tol 5の高い接着性は、細胞表層に存在するナノファイバー状のタンパク質AtaAによるものであることが明らかになっている。非特異的ながら迅速かつ強固であるというAtaAの接着は、他のタンパク質とは一線を画すものである。既知のメカニズムでは説明しくいAtaAの非特異的接着機構の解明は、特異的相互作用と非特異的相互作用の違い、さらには生体分子と材料表面との相互作用の新しい機構の発見に繋がると考えられる。そこで本研究では、材料非特異的でありながら高い接着性を示すAtaAの接着機構を明らかにすることを目的とし、平成30年度は接着機能部位の探索と接着駆動力の評価を実施した。 (1)接着機能部位の探索:AtaA変異体を発現するプラスミドを複数構築し、大腸菌発現系で生産、精製し接着性を評価した。その結果、接着性の低下したAtaA変異体を取得した。同じ残基の変異体でも、変異後のアミノ酸の種類によって接着性に違いが表れることが明らかになった。 (2)接着駆動力の評価:AtaAの接着性を複数の温度条件で水晶発振子マイクロバランス(QCM)を用いて評価した。その結果を、平衡定数の自然対数を縦軸に温度の逆数を横軸にしたグラフにプロットすることで、ファントホッフの式から接着に関する熱力学的な知見を得た。また、異なる溶媒条件下での接着性評価の条件検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画のひとつであった、異なる溶媒条件下におけるAtaAの接着性評価の検討が不十分で結論を得るに至らなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた知見を基にAtaAの接着を構成的に理解する。具体的には、接着性を示さないAtaA変異体に、接着に関与することが示唆された残基を組み込みその接着性を評価する。組み込んだ変異が接着性に与える影響をフィードバックして組み込む変異を繰り返し選定し、接着に関わる残基とその十分条件を明らかにする。加えて、異なる溶媒条件下におけるAtaAの接着性評価を詳細に行うことで、前年度に達成できなかった接着に重要な相互作用の特定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
サンプル調製や条件検討に時間を費やしたことで、計画していた物理化学的測定を十分に実施することができなかったため。
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