研究課題/領域番号 |
18K14064
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
堀口 一樹 大阪大学, 工学研究科, 助教 (80791897)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 浮遊培養 / 剪断ストレス / トラッキング |
研究実績の概要 |
浮遊懸濁培養中の細胞凝集体にかかる剪断応力を推定するため,浮遊懸濁状態のiPS細胞凝集体の動きの撮影を行った.培養プレートを乗せた平板型LED光源および高速度カメラをシェーカー上に搭載して,培養容器とカメラを同時に振盪させることで,浮遊振盪した状態のiPS細胞の動きのみを撮影することができた.当初は染色した架橋デキストランビーズを用いて撮影を行ったが,細胞と比重・形態が異なるため,ヒトiPS細胞の凝集体をパラホルムアルデヒドで固定し,CBBで染色を行った凝集体サンプルで撮影を行った. 続いて,撮影された動画から,iPS細胞凝集体の動きのトラッキングを行った.様々な振盪速度の旋回および往復振盪におけるiPS細胞凝集体の軌道を取得し,加速度を計算することで,iPS細胞が流体から受ける力を見積もることができる.加速度の経時変化で比較すると,旋回振盪は安定した加速度の値を示したが,往復振盪は周期的に高い加速度を受けていることが示された.また,単位時間あたりの平均加速度を比較したところ,振盪速度が高いほどiPS細胞にかかる平均加速度が高いことが示され,同じ振盪速度では旋回振盪の方が往復振盪より低い平均加速度がかかっていることが示された.これにより,振盪培養においては旋回振盪の方が細胞の剪断ストレスがかからない状態で培養できる可能性が示唆された. 今後,測定を行った各条件において実際にiPS細胞を浮遊懸濁培養し,培養データと今回得られた加速度データを比較することで,今回確立した測定法の妥当性について評価する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は1)動画撮影及びトラッキングに基づく剪断ストレス測定法の構築と2)実際の培養データとの比較の2つで構成されており,それぞれ1年ずつの計2年で進行することを予定している.現時点において,前者の動画撮影及びトラッキングに基づく剪断ストレス測定法の確立を行った.結果として,動画撮影装置の設計および様々な振盪条件における動画撮影およびトラッキングを完了しており,さらに計算された加速度を用いた各振盪条件の比較も完了しており,浮遊懸濁培養中におけるiPS細胞の剪断ストレスを推定するパラメータ候補の抽出も完了していることから,1年のうちに2つある計画のうちの1つが達成されており,概ね計画通り,順調に進展していると言える. また,iPS細胞の浮遊懸濁培養の実験も予備検討を終えており,各条件における浮遊懸濁培養の培養データを取得することは予定通り残りの期限で十分終了可能であり、比較結果次第では学会発表および論文発表も期間内に実施できると考えられる。以上から,今後の見通しから鑑みても,「おおむね順調に進展している」と判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
今後,2)実際の培養データとの比較を実施し,抽出されたパラメータとの比較を行うことで,確立した剪断ストレスの推定法の妥当性の評価を行う.具体的には,撮影した振盪条件で浮遊懸濁培養を行い,測定した加速度パラメータとの培養結果(トリパンブルー色素排除試験法による生細胞数の計数,LDH排出量に基づく死細胞数測定およびフローサイトメトリー法に基づく未分化性評価)と比較し,それぞれの培養データとの相関性を評価することで,本研究で確立した剪断ストレス推定法の妥当性を検討する.また,並行して論文投稿の準備を行い,成果の報告を行う.
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