研究課題/領域番号 |
18K14067
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
南畑 孝介 九州大学, 工学研究院, 特任助教 (90648586)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | タンパク質ポリマー / 酵素反応 / 重合 / ジスルフィド / ペルオキシダーゼ |
研究実績の概要 |
西洋わさび由来ペルオキシダーゼ(以下HRP)酵素反応を利用した直鎖型タンパク質ポリマーの調製を検討した。まず、新規のペプチドタグとして、隣接したシステインとチロシンを含むペプチドタグであるCY-tagの設計を行った。SpyCatcher(以下、SC)をポリマー化する標的タンパク質として選択し、SCのN末端にCYGGG、C末端にGGGCYというCY-tagを付与したYC-SC-CYの調製を行った。またタンパク質ポリマー上に集積化させるタンパク質として、緑色蛍光タンパク質(EGFP)ならびに塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を選択し、SCと自発的に共有結合を形成するSpyTag(以下ST)というペプチドタグを付与した組み換え体を調製した。これら3種類の組換タンパク質を大腸菌発現系によって発現して、タンパク質を得ることに成功した。まず、HRPとYC-SC-CYを混合し、ジスルフィド結合を介したポリマーが調製できるかどうかについて評価した。その結果、HRPを添加した条件ならびにHRPとH2O2を添加した条件において、非還元SDS-PAGE解析によってダイマーならびに環状化したYC-SC-CYの形成が確認された。一方、チロシン残基のみをペプチドタグとして導入したY-SC-Yでは、HRPを添加した条件では変化がなく、HRPならびにH2O2を添加した条件で重合化した。これらの結果から、CY-tag内のチロシン残基で生じたラジカルは、隣接するシステイン残基へ転移し、システインの酸化反応を引き起こしていることが示唆され、CY-tag内での反応が狙い通りに進行していることが示唆された。しかしながら分子間での架橋反応効率が非常に低く、分子内で環化してしまい、ポリマーを得るに至っていないことから、リンカー部分を剛直な配列に変えるなどの検討が必要であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
直鎖状ポリマーの調製を完了して、その機能化までを実施する予定であったが、現状、タンパク質ポリマーの調製に難航している。必要とされている他のタンパク質についてはすでに調製が完了しており、その機能の評価も完了していることから、ポリマー化を達成できれば、研究は速やかに進行していくと考えており、まずはCY-tagのリンカー部分の設計を見直し、分子内での架橋反応の抑制を検討し、ポリマー化を達成する。
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今後の研究の推進方策 |
CY-tagのリンカー配列を、プロリンリンカーなどの剛直な配列に変更し、分子内での環化反応の抑制を検討し、重合度の向上を図る。また、反応条件を再検討し、分子間での架橋が起きやすいようにCY-tag導入タンパク質の濃度を上げて反応を行うことや、凍結融解による溶質の濃縮を使い、重合度の向上を図る検討も行う。さらにCY-tag内のチロシン残基の寄与を検討するため、単にシステイン残基のみを導入したタンパク質の重合化も検討を行う。また、次年度の達成目標である、二次元平面状タンパク質複合体の調製検討を始める。自己組織化ペプチド(YYACAYY)を導入したタンパク質(EGFP)を調製し、自己組織化ペプチドと混合し、タンパク質の二次元平面上への集積化を検討する。ペプチドはすでに固相合成で合成済みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
CY-tagを介したタンパク質のポリマー化反応が、分子内で進行してしまいポリマーを得ることができず、研究に遅れが生じたため、繰越金が発生した。CY-tagのリンカー部位を変更した別のコンストラクトを複数構築する際の、プライマー合成費用、シーケンス解析費用ならびにタンパク質の調製費用として次年度の予算として使用する。
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