自然界のタンパク質は、互いに集積化し、最適な形状の構造体を形成することで高効率に機能している。多数のタンパク質分子で構成される高次構造体の構造を制御することは、その機能を最大限に発揮する為に極めて重要である。本研究では、酸化還元酵素の酵素反応を利用して調製される「タンパク質ポリマー」の構造を制御する技術の開発を行った。具体的には、システインとチロシンを含む新たなペプチドタグCY-tagを考案した。西洋わさび由来ペルオキシダーゼ(HRP)またはラッカーゼ(Lac)の反応によって、CY-tag内のチロシン残基のラジカル化反応を触媒し、発生したチロシルラジカルから隣接するシステイン残基への速やかなラジカル転移反応を介して、ジスルフィド結合を形成させた。この反応を利用し、ジスルフィド結合で連結された直鎖状タンパク質ポリマーの調製を達成した。また、別のアプローチとして、タンパク質の立体障害を利用したタンパク質ポリマーの構造制御法の構築を行った。まず、タンパク質のループドメインにHRPならびにLacによって基質認識されるチロシン残基を導入した。このループ内のチロシン残基にて架橋されたタンパク質は、立体障害によって1次元に構造が制御され、直鎖状のタンパク質ポリマーとなることを明らかにした。さらに得られた直鎖状タンパク質ポリマーは、検出用プローブ分子として、既存の3次元構造のタンパク質ポリマーよりも高い性能を示し、タンパク質ポリマーの構造制御が、その機能において重要であることを示した。
|