原子数が十数個程度からなるクラスターはバルク物質とは異なる物性を示し、その物性はクラスターを構成する原子数に大きく依存する。クラスターの構成原子数は金属原子や合成法によって決まっており、1原子毎のクラスターの作製はほぼ実現していない。本研究では配位サイト数の決まった樹状高分子を用いて1原子毎に制御したIrクラスターの作製を目指し、令和元年度においては前年度に単離したイリジウム多核錯体を用いてIrクラスターの作製とそれらの水素発生反応の原子数依存性を見出した。 Ir多核錯体をカーボン担体上に分散担持し、水素雰囲気化で加熱還元することによりIrクラスターを得た。高分解能電子顕微鏡では1 nm程度の大きさの粒子が観察され、数nm程度の領域に原子が分散されていた錯体の電子顕微像との比較からクラスター化が進行したことが明らかになった。X線光電子分光およびX線吸収分光の結果から、生成したクラスターは部分的に酸化されていることが示唆された。作製したIrクラスターの電気化学的水素発生反応活性を調べたところ、バルクのIr粉末よりも高い反応活性を示し、Ir13核錯体から作製したIr13クラスターが最も高活性を示すことが分かった。 Ir多核錯体と同様の手法を用いて、デンドリマーを配位子とするRh多核錯体を合成できた。これらのIr多核錯体とRh多核錯体をリンカー分子を用いて組み合わせることで、Ir7核Rh7核多核錯体のボトムアップ合成に成功した。この錯体の水素雰囲気化加熱還元によりIr-Rh合金クラスターが作成できた。さらに作製したクラスターが同核数のIrクラスターより高い水素発生反応活性を示し、合金化による高活性化を見出した。
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