研究課題
本研究では、金属ナノ粒子において新たな物性開拓を行うため、バルクでは存在しない結晶構造を有する金属ナノ粒子の合理的な設計指針を確立し、先駆的な金属ナノ材料を創製すること、および結晶構造制御が物性に与える影響をその触媒特性を中心として調べることを目的としている。本申請研究により金属ナノ粒子の合理的な結晶構造制御方法が見出された暁には、「金属種」「金属組成」や「サイズ」に加え、「結晶構造」という新たな自由度が得られるため、触媒・ナノ材料開発の自由度が広がり、更なるナノ材料科学の飛躍・展開が期待される。2018年度は申請者がこれまで開発したfcc構造のRuの結晶構造メカニズムをX線吸収分光、X線回折法を用いて研究し、前駆体のアセチルアセトナト錯体が特異な結晶核を安定化させていることがfcc構造の形成に重要な役割を果たしていることを実験的に解明した。この結果をまとめた論文を執筆し、投稿した。この結果を踏まえ、来年度は他の金属における結晶構造制御を検討する。また、合金系においても、これまで申請者が合成したPdRu固溶体合金において、1:1組成のものは合成直後はfcc構造が優先的に形成されるが、ある処理を施すとhcp構造が主となることを発見した。結晶構造が変化した結果、電気化学触媒反応において著しく耐久性が向上することも見出した。種々の結果をまとめて近く論文として報告する予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究の目的はこれまでバルクでは存在しえなかった結晶構造を有する金属ナノ粒子の創製であり、技術的に極めて困難且つ、挑戦的な内容である。しかしながら、単金属における結晶構造制御のメカニズムが実験的に明らかになったことや、合金系においても新たに結晶構造制御が行える組み合わせが増えてきたことは、想定以上に研究が進展しており、また結晶構造制御した新物質が既存の材料を上回る触媒性能を持つことは材料開発としても非常に有意義な結果といえる。
引き続き、単金属および合金系において結晶構造制御手法の開発および材料開発を行っていく。得られた新規材料はその電子状態を明らかにし、触媒評価を主に物性検討を行っていく。新規物に関しては論文作成はもちろんのこと、特許取得も視野に入れ研究を進める。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件)
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