本研究では、金属ナノ粒子において新たな物性開拓を行うため、バルクでは存在しない結晶構造を有する金属ナノ粒子の合理的な設計指針を確立し、先駆的な金属ナノ材料を創製すること、および結晶構造制御が物性に与える影響をその触媒特性を中心として調べることを目的とした。本申請研究により金属ナノ粒子の合理的な結晶構造制御方法が見出された暁には、「金属種」「金属組成」や「サイズ」に加え、「結晶構造」という新たな自由度が得られるため、触媒・ナノ材料開発の自由度が広がり、更なるナノ材料科学の飛躍・展開が期待される。申請者は、これまで開発したfcc構造のRuの結晶構造メカニズムは前駆体のアセチルアセトナト錯体が特異な結晶核を安定化させていることが起因であるとX線吸収分光、X線回折法を用いて実験的に解明した。本研究期間内では、この結果を踏まえ、通常はhcp構造しか形成しないOsにおいても、同様にfcc構造を有するOsナノ粒子を初めて合成することに成功し、その結果を論文として発表した。これは新物質を開発しただけでなく、金属ナノ粒子において、合成条件により結晶構造が制御できるという新たな例でもあり、本提案で掲げる、『結晶構造』が新たな自由度となり得ることを示す大きな意義がある。また、合金系においても、これまで申請者が合成したPdRu固溶体合金において、1:1組成のものは合成直後はfcc構造が優先的に形成されるが、ある処理を施すとhcp構造が主となることを発見した。結晶構造が変化した結果、電気化学触媒反応において著しく耐久性が向上することも見出し、論文として投稿している。
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