従来型の太陽電池において、最も高い光電変換特性が得られるのはバンドギャップ約1.2 -1.4 eV(= 1000-860 nm)である。様々なヘビードープ半導体の中でも、可視領域の吸収が少なく、赤外領域に局在表面プラズモン共鳴(LSPR)を示すような材料は決して多くない。そのため、すでに合成法が確立されており、およそ1100 nmに光吸収ピーク波長を持つプラズモンナノ粒子であるCuSを合成し、デバイス作製を行った。具体的には、CuSやCdSのナノ粒子を、長鎖アルキル基を含む溶液中におけるホットインジェクション法によって、それぞれ合成した。次に、CdSナノ粒子分散液と、短鎖アルキル基を有した保護剤を含む溶液を、ITO導電性電極やSi電極基板上に、交互にスピンコートすることで、CdSナノ粒子堆積膜を作製した。さらに、CuSナノ粒子分散液をスピンコートによってCdSナノ粒子堆積膜上へ担持することで、CdS/CuS電極基板を作製した。ここで、CdSとCuSはそれぞれn型、p型半導体であり、p-n接合を形成することによって、高い電荷分離効率を示すことが期待される。作製CdSナノ粒子膜上に担持したCuSナノ粒子膜(CdS/CuS電極基板)に赤外光を照射したところ、起電力と光電流が観測された。以上のことから、波長1000 nm程度の赤外光を用いても、外部電流が取り出せることが明らかとなった。さらに、CuS膜は可視光透過性も高く、透明太陽電池として機能することを示した。
|