研究課題
2019年度は、GaAs量子ドット中の電子スピンについての完全ベル測定の実現を目指し、その要素技術としての多値スピン読み出しに向けて、まず読み出し手法の見直しを行った。想定していた読み出し手法では、代表者が本研究課題に先駆けて開発した3値スピン読み出しを発展させ、4つの2電子スピン状態全てをシングルショットで判別する。しかし、2電子スピンの緩和時間が短いために、高い読み出し忠実度を得るのは困難であると予想されていた。今年度、ゼーマン分裂を利用した単一電子スピン読み出しと組み合わせる新たな手法を考案した。これにより、単一スピンの長いスピン緩和時間のために読み出し忠実度の向上が期待される。改良された多値スピン読み出し実験を行う試料として、電荷計を備えた4重量子ドットを作製した。作製した試料を希釈冷凍機で冷却し、電気伝導測定を行った。試料の不純物のために、一部のドット間トンネル結合の制御性が悪く、4重量子ドット構造での多値読み出しは困難であった。そこで実験手法を再修正し、2重量子ドットでのパウリスピン閉塞効果を用いたスピン読み出しと組み合わせる方法を試みた。この手法は従来精度が比較的低かったが、近年電荷状態変換を組み合わせることにより精度向上が報告されている。本研究ではさらに、スピン励起状態の準安定化による更なる精度向上手法を発案し、その実証に成功した。試料作製の際に、GaAs二次元電子基板の特性が不良であったために作製が難航してしまい、実験開始が今年度終盤となってしまった。そのため、多値スピン読み出し実験まで完了できなったが、要素技術は達成しており、今後の研究で早期の達成が見込まれる。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件)
Japanese Journal of Applied Physics
巻: 59 ページ: SGGI05-1-6
https://doi.org/10.7567/1347-4065/ab5b62
Nature Communications
巻: 10 ページ: 2991-1-6
https://doi.org/10.1038/s41467-019-10939-x