研究課題/領域番号 |
18K14087
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
吉田 裕安材 信州大学, 学術研究院繊維学系, 助教 (40727913)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エレクトロピニング / シクロデキストリン / 不織布 / 結晶性 / 分子混合 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、高分子・繊維科学と超分子科学を最大限に融合させた新分野の挑戦的創出に向け、最近我々が研究を進めている「環状低分子化合物の直接紡糸技術(低分子紡糸技術)」を大幅に発展させることを大目標とする。具体的には、直近の課題であるi) 分子レベルでの複合化、ii) ファイバー中の分子配列(結晶性)の制御、iii) 低分子紡糸メカニズムの解明を目指す。そのために、初年度(H30年度)はi)ならびにii)の解決を主として取り組みながら、iii)を始める下準備を進めた。 ii)の課題は既に解決済みであり、得られるシクロデキストリン(CD)ファイバーの結晶性を制御可能な条件を見出した。この結果は既に論文として出版済みである。i)の課題も既に解決済みであり、どの程度の割合で複数のCDが混合されたファイバーが作製可能かを明らかにしている。この結果を用いて論文投稿を進めている。iii)の課題を進めるにあたり、SAXS測定の下準備を進めている。 以上のことから、初年度に実施予定以上の進捗であり、全体計画の2/3は既に完了している。予定通り、H31年度は小角X線散乱(SAXS)測定を用いて、CD溶液の解析を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進捗上、ii)の結果から説明するが、紡糸条件(最も有効な条件として、環境湿度)を精密に制御することにより、任意の結晶性を示すα-/β-シクロデキストリン(CD)ファイバー・不織布を作製することに成功した。また、非晶性α-/β-CDファイバーは高湿度条件下で保存することで、結晶性が誘起されることも明らかになった。このような現象はγ-CDでは確認できなかった。作製した不織布はその結晶性に関わらず、バルクならびにミクロでの形状・強度の違いは確認できなかった。本結果は、Bull. Chem. Soc. Jpn.誌で既に発表している。 上記ii)の結果を参考にi)の検討を進めたところ、複数のCDを原料に用いて、任意の結晶性を示す混合CDファイバーが作製できることも確認した。また、高湿度条件下における結晶性誘起を利用することで、固体ファイバー中でどの程度各分子が混合されているかも明らかにした。本結果を用いた論文投稿を現在進めている。 以上のことから、初年度に実施予定以上の進捗であり、全体計画の2/3は既に完了している。予定通り、H31年度はSAXS測定を用いて、CD溶液の解析を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
ii)の成果の論文化を進めながら、SAXS測定を用いて、CD溶液の解析を進めていく。溶液中での会合体の形状・サイズ等が明らかになれば、紡糸前後におけるCDの状態に対する知見が得られるものと期待している。
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