研究課題/領域番号 |
18K14089
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小川 智史 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (70739101)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ナノ複合材料 / 表面・界面物性 / 水素吸蔵材料 / X線分光分析 |
研究実績の概要 |
再生可能エネルギーの有効利用のためには、水素によるエネルギー貯蔵が有効であり、この実現のためには低コストかつ高性能な水素貯蔵材料の開発が喫緊の課題となっている。本研究では安価なMgをベースとして遷移金属との界面を有した複合ナノ材料を開発し、界面状態を制御することで水素吸蔵能の向上を目指している。 平成30年においてはMgとMnを同時に蒸発させることで複合ナノ粒子の作製に成功した。透過型電子顕微鏡観察から見積もられた粒径は10 nm程度であり、粒子内でMgとMnが均一に混ざり合っていることが明らかとなった。この傾向は組成を変化させても変わることがなかった。MgとMnはバルク状態では混ざりあうことのない金属同士にも関わらず、ナノ粒子中で均一に分散していることは大変興味深い。しかし、現時点での懸念として、大気中での試料輸送を経て分析を行っているため、分析結果に対する大気酸化による影響は除去しきれない。そこで、高真空下での試料輸送を可能とするトランスファーベッセルの制作および、試料の水素化と試料輸送が可能なトランスファーベッセルの設計を行った。Mgナノ粒子は真空下においてでさえ残留ガスによってすぐさま酸化してしまうが、高真空対応のトランスファーベッセルを用いることで運搬時の酸化を抑制し、そのままの状態を分析することが可能である。また試料の酸化抑制と水素化を同時に満たすべく、加熱とガス導入が可能なトランスファーベッセルを設計した。これらを併用しつつ、X線吸収微細構造分析や水素化した試料に対する昇温脱離測定を行うことで、界面状態と水素吸蔵能の関係を調べていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに試料作製装置の立ち上げとその調整を終えている。試料作製に成功し電子顕微鏡による観察等の分析も実施済みであり、外部実験施設での測定の準備も特段の問題なく進めている状況のため、おおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は高真空対応トランスファーベッセルと水素化反応トランスファーベッセルを用いることで、Mg複合ナノ粒子の水素化前後における界面状態の分析を進めるとともに、昇温脱離実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
事前の予想に反して、既存の備品の流用によって実験装置を構成することが可能となった。当該年度に執行予定であった予算を次年度以降の計画実施に用いることで、より良い研究への昇華させることを着想したため。
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