本研究では、不純物ドープシリコン量子ドットのバイオ医療・オプトエレクトロニクス応用に向けた新機能開拓を目的としている。最終年度は主に、応用技術の開発に主軸を置き、具体的に以下の項目に関する実験的研究を実施した。 (1)不純物ドープシリコン量子ドットのサイズ制御による特性制御は実用上重要な技術である。バイオ分野で用いられる電位泳動法を見ず分散量子ドットへ適用し、単分散な量子ドットを得る技術を開発した。発光特性を詳細に調査し、発光エネルギーと線幅の制御を実証した。また、ウシ血清アルブミンとの複合体を形成し、電気泳動法によりその複合体の構造特性を調査した。シリコン量子ドットの粒径により吸着過程が異なることを明らかにし、今後バイオイメージングへ応用するにあたり、生体内での凝集や発光挙動について重要な知見を得た。 (2)バイオイメージングへの応用を念頭に、数ナノメートルのシリコン量子ドットの制御された凝集体からなる球状粒子”Supraparticle”を開発した。Supraparticleの粒径を数十~数百ナノメートルで制御し、単一の量子ドットに比べて、輝度が高い発光を得た。また、不純物ドーピングにより、量子ドット間の非発光な過程を最小限に抑え、安定な発光を実現した。また、チェコ・カレル大との国際共同研究により金ナノロッド―シリコン量子ドットシェルの形成に成功し、プラズモンによる発光増強効果を実証した。 (3) シリコン量子ドット発光体の太陽電池向け発光型集光器への応用可能性について検討した。チオール基を含む異なる有機ポリマー内に量子ドットを埋め込み、発光量子効率と表面欠陥密度の関係、波長変換特性について詳細に調査した。量子ドットが無い場合に比べて、高い太陽光変換効率を達成し、シリコン量子ドットの発光型集光器への応用可能性を実証した。本研究はスウェーデン王立工科大と共同して行われた。
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