研究課題/領域番号 |
18K14098
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
佐々木 隆浩 北海道医療大学, 薬学部, 助教 (20714489)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 細胞内サンプルリターン / ナノ粒子 / 位置選択的分子修飾 / ナノバイオマテリアル |
研究実績の概要 |
本研究は、細胞内の標的物質を捕捉・回収する(サンプルリターン)ナノ材料の開発を目指すものである。この達成には、細胞内取込の誘起、標的物質の認識および捕捉、細胞外での回収という複数の機能連携が必要となる。本研究では、各機能を担う分子材料の厳密な修飾位置制御というアプローチにより各々の機能の効果的な発現および機能連携を実現し、細胞内サンプルリターンの達成を目指している。 2018年度の研究成果は、(1)磁性ナノ粒子の単分散合成条件の確立、(2)標的物質認識用分子材料の合成、(3)標的物質捕捉用分子材料の合成、(4)位置選択的分子修飾法のうちのスポット修飾法の確立である。(1)粒子径の単分散性は位置選択的分子修飾および機能発現における均質かつ高い再現性の確保において重要であり、今回確立した合成条件では粒子径16 nm(±9%)の単分散磁性ナノ粒子が得られた。(2)、(3)において標的物質に薬物代謝酵素のひとつであるCYP3A4を選択した。(2)のCYP3A4認識分子については、CYP3A4と強く相互作用するketoconazole部位、スペーサー部位、磁性ナノ粒子接合部位からなる分子を合成した。(3)のCYP3A4捕捉分子については、接近したCYP3A4のリシン残基との共有結合形成を狙い、カルバメート骨格を有する反応部位、スペーサー部位、ナノ粒子接合部位からなる分子を合成した。 (4)のスポット修飾はナノ粒子の一点にのみ特定の分子を修飾する手法であり、後続の1対1修飾、範囲指定修飾の起点ともなるため重要である。シリカ粒子を母材とした修飾補助材を別途合成し、これを用いたスポット修飾反応により粒子表面の一点にのみチオール基を有する磁性ナノ粒子が得られた。現在は、(2)、(3)の分子材料の機能評価を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度の研究実施計画は、主に材料合成と分子修飾法の確立であり、研究実績に記載した通りほぼ当初の予定どおりの進捗状況となった。しかしながら、現在行っているバッチ式スポット修飾法は操作が多段階かつ煩雑であり、効率が悪いことがわかった。この課題の解決のため、フロー式分子修飾システムの構築を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
課題としてスポット修飾の効率が低い点があげられる。この点については、現在、フロー式分子修飾システムの作製を企業に依頼中であり、高効率かつ均質なスポット修飾ナノ粒子が得られる環境を整備する予定である。2019年度は、ナノ材料へのさらなる修飾法として1対1修飾法、範囲指定修飾法を確立した後、2018年度に合成した機能性分子、および細胞膜透過性分子、PEG誘導体分子をナノ粒子へ位置選択的に修飾し、標的物質の捕捉・回収の検討を行う。検討する実験系として、2種の精製酵素混合系、ミクロソーム、および生細胞からの標的物質の捕捉・回収といった段階的な検討を想定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた機器(減圧乾燥装置一式)が共用機器として利用可能となったため、残額が生じた。一方、研究の進展によりナノ粒子へのフロー式分子修飾システム構築の必要性が生じた。現在、企業へ当該装置の開発を依頼しており、上記予算は当該装置の購入に充てる予定である。
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