研究課題/領域番号 |
18K14102
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
森 宣仁 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (70806215)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | organs-on-chip / 肝臓 / 灌流 / 血管 |
研究実績の概要 |
2019年度は、昨年度から引き続き臓器モデルとして血管付き肝臓モデルの構築に注力した。肝臓モデルについては、ハイドロゲル包埋法やスフェロイド法などで構築された三次元肝組織でアルブミンやシトクロムP450といった肝機能が高く発現することが報告されている。しかしながら、このように高い機能を有する三次元肝組織においても、in vivoと比べればその機能は依然低い。この一因として考えられるのは、これまでに考案された三次元肝組織に洞様毛細血管(類洞)が存在しないことである。そこで、2018年度は培養デバイスを用いて三次元肝組織に送液ポンプを接続し、培養液を灌流することで、肝組織中の血管内皮細胞の自己組織化により毛細血管を形成する戦略をとった。この結果、生体の類洞に類似した構造を形成することに成功した。2019年度においては、この類洞様構造を有した肝臓モデルについて、(1)血管の灌流性の評価、(2)次世代シーケンサーを用いた網羅的な遺伝子発現比較、(3)細胞活性の評価及び薬剤代謝能の評価を実施した。(1)については、主血管にIndia inkを注入することによって類洞様構造へのink流入が観察された。これは類洞様構造が主血管と接続され、さらにネットワーク化されていることを示している。(2)については灌流培養を行った肝臓モデルにおいては血管新生に関する遺伝子発現が増大していることから、類洞様構造形成に灌流が重要な寄与をしていることが分かった。(3)については、肝臓の活性の指標として用いられるアルブミン産生量や、代謝酵素(シトクロームP450)による薬剤代謝活性が、非灌流条件と比べて、灌流条件において多く検出されることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝臓モデルの評価が進展しており、順調な進捗である。なお、当初心臓モデルを開発する予定だったが、昨年度より、創薬において重要な役割を果たす肝臓モデルの開発に切り替えて推進している。
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今後の研究の推進方策 |
臓器モデルの構築がほぼ完了したため、複数臓器の接続を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞培養の消耗品について、予定より少ない消費量であったため。次年度において細胞培養、デバイス作製等に使用する。
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