本研究の目的は、反射角度やピエゾ抵抗素子を用いた表面応力センサよりも信号変換効率が2桁高いファブリペロー干渉型センサに信号処理回路と選択スイッチ回路を集積し、外部環境の影響を受けにくい、複数種類の抗体検出が可能なセンサの構築することにある。信号を正確に検出するには外部環境の影響を受けないセンサが必要である。センサが検出した信号が小さくなる原因として、溶媒による応力の歪みや信号のリーク、透過光強度変化、微小な振動による信号の乱れなどがあり、それらの外部環境の影響を極力抑え、かつ、マルチ検出が可能なセンサが構築できれば、ガス分子や生体分子などの異なる検出対象分子の並列処理し、迅速な検出が可能である。本研究の手法は、外部環境の影響を除去できるセンサであるため、血液や筋肉などの振動をセンシングする際にキャンセルでき、生体挿止型センサへの応用も可能である。表面応力センサでは、たわみ検出下限は重要なパラメータであり、小さなたわみを検出することによって、低濃度での分子吸着を測定が可能である。光干渉型ひずみセンサの変位検出下限評価は、従来のピエゾ抵抗型カンチレバーセンサに比べ、一桁優れていることが報告されている。 平成30年度は、ファブリペロー干渉型センサの変位検出下限の向上・評価と非標識分子検出を行った。センシング部分は、フォトダイオードの上にファブリペロー干渉計を構成する中空構造としたMEMS可動膜を有する構造となっている。変位検出下限向上のためにセンサ可動膜をPMMA膜(150nm)とパリレンC膜(100nm)の光干渉型表面応力センサを作製し、1 pg/mLのヒト血清アルブミン抗原の抗原抗体反応の検出を光反射スペクトル変化と電気的測定の同時測定に成功した。また、本センサの最小変位検出は116μmであった。これは従来のカンチレバー型表面応力センサと比較して4.3倍の検出感度である。
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