研究課題/領域番号 |
18K14113
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
石原 淳 東京理科大学, 理学部第一部応用物理学科, 助教 (50801156)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 電子スピン / 二次元電子ガス / 半導体量子構造 / トポロジカル光波 |
研究実績の概要 |
本研究では、トポロジカル光波の空間特異性を利用した超解像スピン生成・検出手法を確立し、2種類のスピン軌道相互作用が働く半導体量子井戸中に光励起した電子スピンの空間緩和ダイナミクスを詳細に明らかにすること、また、トポロジカル光波の偏光特異性と位相特異性を利用してスピン空間パターンを制御することを目的としている。本年度はスピン空間緩和ダイナミクスを測定するためのベースとなる時間空間分解Kerr回転検出系を構築した。さらに液晶スパイラルプレートを用いて中心に光強度の暗点をもつ軸対称偏光ビームの生成や、偏光子を組み合わせた光強度の谷を持つビームの生成を確認した。 スピンの時空間ダイナミクスに関しては、スピン歳差運動長より十分大きな検出光スポットサイズの光学系を用いてゼロ磁場におけるスピン歳差運動を観測した。電子の散乱頻度が小さければ、スピン軌道相互作用による空間的な歳差運動を時間的な歳差運動として考えることができ、測定で得られた歳差運動周期からスピン軌道パラメータを求めることができた。また、ゼロ磁場におけるスピンダイナミクスの励起光強度依存性を測定した結果、歳差運動周期が励起光強度の増加とともに増大することがわかった。これは光励起キャリアの増大とともにスピンの拡散速度が低下したことが原因と考えられるが、この励起光強度によるスピン拡散速度の変調によってスピンアンサンブル状態の変化の速さがコントロールできることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通りスピン光学測定系を構築し、ドーナツビームや光強度の谷を持つビームの生成を確認した。また、スピン歳差運動長よりスポットが大きい領域でのゼロ磁場歳差運動からのGaAs/AlGaAs単一量子井戸におけるスピン軌道相互作用と拡散係数の評価ができた。一方でスポットサイズが小さい領域やドーナツビームを用いたときの信号ノイズが大きいためそれを改善することが望まれる。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度構築した光学系についてダブルロックイン検出やヘテロダイン検出を適用することでSN比を向上させる。そして、トポロジカル光波を用いたスピン励起とその超解像スピン分布測定およびスピン制御を行っていく。ドーナツ状の強度分布をもつ軸対称偏光ビームやそれを偏光子に通すことで生成される強度の谷を持つビームを用いることで検出するスピンを空間的に選択し、得られるスピン信号の変化からスピン時空間ダイナミクスを明らかにする。また、偏光分布を持った光や光渦を使ったスピンパターンのコントロールも試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた電子部品の購入費が少なく済んだため未使用額が生じた。未使用額は次年度の光学系改良に充てる予定である。
|