研究課題/領域番号 |
18K14114
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研究機関 | 大島商船高等専門学校 |
研究代表者 |
神田 哲典 大島商船高等専門学校, 一般科目, 准教授 (80616079)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | スピン波 / 位相同期 / 強磁性共鳴 |
研究実績の概要 |
高コヒーレントなスピン波発生を目指して、スピン波を励起する高周波電極として一般的に用いられているコプラナー線路ではなく、同一の幅の信号線とグランド線からなるスロット線路を用いたスピン波発生を検討した。信号線幅と信号線の間隔を系統的に変化させた素子を作製してその高周波応答を評価した結果、スピン波の生成に必要な磁化歳差運動の励起は素子構造に強く依存することを明らかにした。この原因を調べるためにマイクロマグネティクスに基づく数値シミュレーションを実施した結果、高周波電極周囲に局所的な磁化歳差運動が生じて2つの波源からスピン波が発生・伝搬が生じており、スピン波の位相と局所歳差運動の位相がそろう条件においては共鳴的に局所磁化歳差運動を増幅させることがわかった。本年度は数値シミュレーションをさらに実施し、外部磁場の大きさで変化するスピン波の波長が関係していることを明らかにした。この新規に見出した現象は従来の磁性体の物性値によって決まる強磁性共鳴条件とは異なり、人為的に制御可能であることからスピン波発生素子設計に重要な指針を与える結果である。さらに、スロット線路から1mm離した場所に高周波電極を配置することでスピン波の直接計測にも成功した。本素子におけるスピン波の特徴は、その磁化歳差運動が素子サイズに依存することに起因してスピン波の強度が明瞭な磁場依存性を示すことで、スピン波干渉効果に起因すると考えられる特徴的な出力変化が現れた。このことは本研究において見出した磁化歳差運動の励起機構にスピン波干渉効果が大きく関与することを示す直接的な証拠であるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、高周波線路をスロット線路とすることで高コヒーレントスピン波励起に重要な強磁性電極の特徴を把握することができた。また、その励起機構についても、マイクロマグネティクスシミュレーションによって明らかにすることができたため。この結果はスピン波発生条件の人為的制御方法の指針を与えるものである。さらに、スピン波の直接計測を行い、スピン波干渉効果に起因する特徴的な出力変化も検出に成功したため。以上より、概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度は面内方向に磁場印加した際の実験を主に行った。R1年度は主に面内方向の測定結果の数値シミュレーション解析とスピン波の直接計測を行った。R2年度は当初予定していた試料薄膜の面直方向に磁場を印加した場合についての検討を行い、スピン波発生の人為制御に対する理解を進め、高コヒーレントスピン波生成条件の確立を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
R2年度開催予定の国際学会への旅費に使用が生じたため、一部を次年度に繰り越した。しかしながら3月末にCOVID19の影響で国際学会は開催中止となった。そのため、本研究の解析をさらにすすめるために数値シミュレーションを行うワークステーションを購入することとする。
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