研究課題/領域番号 |
18K14117
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柴田 基洋 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (40780151)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 透過型電子顕微鏡 / 磁気ダイナミクス / 測定手法 / スピントロニクス / 電子線 |
研究実績の概要 |
本年度は、透過型電子顕微鏡の走査型電子顕微鏡機能の不具合による実験の延期や、新型コロナウイルスの影響による出張実験の回避の必要に見舞われたため、磁気ダイナミクスの計算のための環境整備などを中心に研究を進めた。 具体的にはマイクロマグネティックシミュレーションによる磁気構造ダイナミクスの計算や、ベクトルポテンシャルを考慮し真空領域での漏れ磁場も含めた磁気構造由来の位相計算の環境構築を進めた。そのために、GPU計算環境を整備したほか、オープンソースのマイクロマグネティックシミュレーションコードを編集することでD2d点群の対称性を持つ系でのジャロシンスキー守谷相互作用を含む磁気構造ダイナミクスの計算を可能にした。また、試料外の真空領域の漏れ磁場も考慮して電子線偏向を計算するためのコードと計算環境を整えた。これらのコードは磁気構造の安定性や磁気構造観察に関連した共同研究などで活用できており、電流印加や熱揺らぎによる磁気ダイナミクスの数値計算と、そのダイナミクスにより誘起される電子線偏向の分析を進めるために有用である。 一方で、磁気ダイナミクスに由来する電子線の偏向の時間変化データの実験的取得については、現在までにマグネタイトナノ粒子について観察を行ったが、残念ながら試料のドリフトが大きく磁気構造の分析を行うまでには至らなかった。 研究課題の当初の目的に比して、2020年度末においては十分な成果が達成できていないと判断したため、補助事業期間延長を申請した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでは、透過型電子顕微鏡の走査型電子顕微鏡機能の不具合による実験の延期や、新型コロナウイルスの影響による出張実験の回避の必要に見舞われたため、磁気ダイナミクスの計算を中心に研究を進めた。 具体的にはマイクロマグネティックシミュレーションによる磁気構造ダイナミクスの計算や、ベクトルポテンシャルを考慮し真空領域での漏れ磁場も含めた磁気構造由来の位相計算の環境構築を進めた。 そのために、GPU計算環境を拡充したほか、オープンソースのマイクロマグネティックシミュレーションコードを編集することでD2d点群の対称性を持つ系でのジャロシンスキー守谷相互作用を含む磁気構造ダイナミクスの計算を可能にした。また、漏れ磁場も考慮した計算コードを作成した。 磁気ダイナミクスに由来する電子線の偏向の時間変化データの実験的取得については、現在までにマグネタイトナノ粒子などについて観察を行ったが、残念ながら試料のドリフトが大きく磁気構造の分析を行うまでには至らなかった。 研究課題の当初の目的に比して、2020年度末においては十分な成果が達成できていないと判断したため、補助事業期間延長を申請した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、新型コロナウイルスの感染拡大状況を鑑みながら、磁気ダイナミクスの計算とそれによる電子線偏向による磁気ダイナミクス分析の可能性の検討を数値計算の観点から進めることを主軸として研究課題を進める。 マイクロマグネティックシミュレーションにおいても電流印加は行えるので、様々な磁壁に対して電流を印加した場合のダイナミクスを計算し、それについてどのような電子線偏向の時間変化が誘起されるのかについて分析する。 合わせて、原子のダイナミクスなど、磁気ダイナミクス以外のダイナミクスにより誘起される電子線偏向についても、分子動力学シミュレーションなどを活用して分析を行うことを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
学術会議のオンライン開催により旅費の支出の必要が大幅に少なくなった他、主に実験について走査型電子顕微鏡の不具合による実験の延期や、新型コロナウイルスの影響による出張実験の回避の必要に見舞われ、実験計画を再考する必要が出てきたため、未使用金が大量に発生した。 新型コロナウイルスの状況を鑑みながら、研究計画を変更して数値計算環境の拡充などにあてることを検討している。
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