有機無機ハイブリッドペロブスカイト材料は優れた性質を持ち、低コストで形成できるため、次世代光電デバイスとしての応用が期待されている。ペロブスカイト材料を用いたデバイスは多く報告されているが、ペロブスカイト材料の結晶情報と光・電気特性の相関性など、ペロブスカイト材料に関する基礎的な理解はまだ得られていない。そこで本研究では、ペロブスカイト結晶の異方性と張力にを着目し、ペロブスカイト材料の結晶情報と光学的、電気的な性質の相関性を解明し、ペロブスカイト薄膜を用いた光電デバイスの性能を向上することを目的とした。 まずは、大結晶ペロブスカイト薄膜の成膜条件を最適化し、従来の成膜法では湿度変化の影響を受けやすいという問題を解決し、再現性よく大結晶を有するペロブスカイト薄膜の形成に成功した。また、成膜時のアニール温度と有機成分の割合を制御することによって、より低い温度で大結晶膜を成膜させることに成功した。次に、ミクロンサイズのペロブスカイト結晶の結晶ごとに光学的な評価を行うために、現有する蛍光顕微鏡を改造し、高空間分解能を有する顕微観察装置を構築し、ペロブスカイト薄膜の結晶ごとに、フォトルミネッセンススペクトルを測定し、結晶の蛍光強度及びピーク位置についての定量評価に成功した。構築した観察系を利用し、違う成膜法で形成したペロブスカイト薄膜の蛍光ピンク位置と強度が違うことが発見した。蛍光マッピング、X線回折法などの結果から、この違いは膜内張力によるものであることがわかった。最後に、上述の知見から、ペロブスカイト太陽電池の新規構造を提案し、高い光利用率と低いコストを両立したペロブスカイト太陽電池の作製に成功した。
|