研究課題
現代のエレクトロニクスの発展において、デバイスの小型化は重要なファクターである。インダクタは3つの基本受動素子の1つであるにもかかわらず、100年以上も前に開発されたコイル型構造をいまだに利用している。微細化に向かないコイル型構造を脱却するために新しい原理のインダクタの提案が切望されている。そこで我々は物質の非線形伝導に関する新しい原理のインダクタを提案した。このインダクタは、微細化可能で、巨大なインダクタンス、巨大なQ値(インダクタンスの特性の目安: 角周波数×インダクタンス/抵抗)、能動的素子特性を有することが期待される。これまでの研究でCa2RuO4の単結晶を用いて40 Hを超えるインダクタンスの観測に成功している。しかしその周波数帯域は1 Hz程度と、極めて低い周波数にとどまっている。また非線形伝導の応答が指数関数的単一緩和であると仮定していた。本研究の目的は、高周波帯域までインダクタンスの発現を目指すことと、単一緩和でない非線形伝導の場合の知見を得ることとした。本年度の研究では非線形伝導の応答速度が比較的速いとされる分子性結晶材料であるb-(meso-DMBEDT-TTF)2PF6を利用して行った。その結果、より高い周波数(100Hz程度)でもインダクタンスの観測に成功し、その周波数依存性は単一緩和では議論できないことも明らかになった。そこで緩和時間に分散を有するモデルと式を新たに提案した。このモデルを用いて実験データを解析すると見事に説明でき、本系の特徴的な時間や非単一緩和の度合いの指標が得られた。
2: おおむね順調に進展している
b-(meso-DMBEDT-TTF)2PF6を利用したインダクタンス研究が進んだため。
現在、インダクタの微小化を目指してナノチューブを利用した研究を進めており、残り一年間で計測および解析まで進める予定である。
名古屋大学に所属していた際に研究計画を作ったものので昨年度から豊田工業大学へ異動することとなり、出費との計画にずれが生じたため。現在所属している豊田工業大学ではインダクタ計測のための機器にいくつか不足があり経費がかさむものの、微細化のための装置が揃っており、このに予算を使う必要がなくなったため。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Applied Physics Express
巻: 11 ページ: 113003~113003
10.7567/APEX.11.113003
Journal of Applied Physics
巻: 124 ページ: 035108~035108
10.1063/1.5040033