昨年度までの研究から、半導体上に銀ナノインクを用いて電極を作製することで、ショットキーバリアダイオード(SBD)が形成できることが明らかとなり、そのダイオード特性の評価を行ってきた。本年度は、作製したSBDのダイオード特性の制御を目的に、以下に示す2項目について取り組んだ。 【①電極作成条件によるコンタクト制御】ダイオード特性は銀ナノインクの焼成時間によって変化することが分かっている。本年度は、特に焼成温度がダイオード特性にどのような変調を及ぼすかについて検討した。シリコン基板上で銀ナノインクを400℃で5分間焼成し銀電極を形成することでSBDを作製した。作製したSBDの直列抵抗は、従来の方法(300℃、10分)で焼成した場合と比べて50倍以上増加した。これは、電極の割れや基板からの剥がれなどが原因であると考えられる。加えて、直列抵抗が大きく、理想係数やバリア高さなどのショットキーパラメーターを正確に導出できなかった。このため、焼成温度の変更によるコンタクト制御については困難であると判断した。 【②ナノ粒子層の挿入によるコンタクト制御】これまでの研究より、SBD形成の際に金属/半導体界面に形成されるナノ粒子によってSBDのショットキーバリア高さが変調を受けることが示唆された。このため、ナノ粒子(2.5nm-金ナノ粒子)を直接界面に導入しコンタクト制御が可能なのではないかと考え検討を行った。その結果、ナノ粒子を導入して作製したSBDのI-V測定より整流比が約1000倍向上することが分かった。逆方向の電流が強く抑制されていることから、ナノ粒子が空乏層幅に影響を与えている可能性がある。 結論として、焼成条件の検討による金属/半導体界面のコンタクト制御を試みたが評価するまでに至らなかった。一方、界面にナノ粒子層を挿入することでSBDの電気特性が大幅に向上するなどの新たな知見が得られた。
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