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2018 年度 実施状況報告書

“その場”観察による実空間と逆空間におけるタンパク質結晶欠陥の評価

研究課題

研究課題/領域番号 18K14134
研究機関北海道大学

研究代表者

山崎 智也  北海道大学, 低温科学研究所, 特別研究員(PD) (50735032)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードタンパク質結晶 / 結晶欠陥 / “その場”観察 / 透過型電子顕微鏡
研究実績の概要

結晶中に導入される欠陥を制御することは、結晶の品質を向上するための基礎である。高品質なタンパク質結晶は、X線などを用いた分子の立体構造解析に用いられるが、これを育成することは非常に困難である。本研究では、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたタンパク質結晶の欠陥の“その場”観察を行うことから、タンパク質結晶の品質低下に繋がる欠陥の生成メカニズムを明らかにすることを目指す。
本年度は液中観察専用ホルダーとTEMを用いて“その場”観察を行った。このホルダーは溶液とTEMの真空環境を隔離した状態で保てる溶液セルを備えている。ここにリゾチームタンパク質の結晶化溶液を入れて観察を行った。
観察では、サブミクロンからミクロンサイズの正方晶と直方晶のリゾチーム結晶が観察された。それぞれの結晶中には、周りと比べて電子が透過しやすくなったために生じるコントラストが観察された。これは、空隙(ボイド)と考えられ、大きさが数十ナノメートル(リゾチーム分子の大きさは約3ナノメートル)であり、空孔(結晶中の1分子が抜けた箇所)が集まって形成されたと考えられる。また、このようなボイドが生成する瞬間を捉えることに成功した。加えて動く様子や、消失する瞬間も捉えている。また、これらの結晶中には、ブロック状に回折コントラストが生成し、これらが動く様子が観察された。このようなコントラストは、結晶がいくつかのブロックで構成され、これらのブロックの結晶学的方位がわずかにずれることで生成されたと考えられる。タンパク質結晶において、このような結晶欠陥の動的な挙動が直接捉えられた例はこれまでにない。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

リゾチームタンパク質結晶中に生成するTEMのコントラストから、このコントラストを生成する結晶欠陥を同定した。また、結晶欠陥が生成する瞬間をリアルタイムで捉えることに成功した。これは当初の計画のとおりである。さらに、ボイドが消失する様子、ブロック状の回折コントラストが動く様子も捉えることに成功した。これらの成果は、タンパク質結晶に生成する欠陥に対する理解をさらに深めることが期待できる。そのため、当初の計画以上に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

本手法で観察される、サブミクロンからミクロンサイズの正方晶と直方晶のリゾチーム結晶中に生成する欠陥の同定ができたため、今後はこれらの欠陥が生成した結晶の電子回折像をとることを中心に実験を進めていく。これらの電子回折像を取得することで、回折点の質や回折パターンの乱れを調べる予定である。また、結晶欠陥の動的な挙動を“その場”観察することに成功したため、これを解析し、欠陥の生成条件などを調べていく予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Sounding-rocket microgravity experiments on alumina dust2018

    • 著者名/発表者名
      Ishizuka Shinnosuke、Kimura Yuki、Sakon Itsuki、Kimura Hiroshi、Yamazaki Tomoya、Takeuchi Shinsuke、Inatomi Yuko
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 9 ページ: 3820-1~6

    • DOI

      10.1038/s41467-018-06359-y

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Immiscibility of Nucleating Aluminum Oxide Nanoparticles in Vapor2018

    • 著者名/発表者名
      Ishizuka Shinnosuke、Kimura Yuki、Kawano Jun、Escribano Rafael、Yamazaki Tomoya、Hama Tetsuya、Sato Rikako
    • 雑誌名

      The Journal of Physical Chemistry C

      巻: 122 ページ: 25092~25101

    • DOI

      10.1021/acs.jpcc.8b08355

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 透過型電子顕微鏡による溶液からの結晶化“その場”観察法の検討2019

    • 著者名/発表者名
      山﨑智也
    • 学会等名
      結晶表面・界面での相転移ダイナミクスに関するその場観察および理論
  • [学会発表] In-situ observation of dynamics of defects in a protein crystal2018

    • 著者名/発表者名
      Tomoya Yamazaki, Yuki Kimura
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2018年大会
  • [学会発表] リゾチームタンパク質の結晶化に関わる2種類の非結晶粒子2018

    • 著者名/発表者名
      山﨑智也、木村勇気、清水洋、藤田咲子、藤原正裕、大野智子
    • 学会等名
      分子・物質合成プラットフォーム 平成30年度 シンポジウム
  • [学会発表] タンパク質結晶中の欠陥の挙動2018

    • 著者名/発表者名
      山﨑智也,A. E. S. Van Driessche,木村勇気
    • 学会等名
      第47回結晶成長国内会議

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公開日: 2019-12-27  

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