研究課題
中性子検出器用シンチレータとして、有機結晶の研究開発を行った。将来の中性子利用において、数ナノ秒以下の速い蛍光寿命が求められている。有機結晶では、数ナノ秒以下の蛍光寿命を有するものがあり、高速応答が実現可能である。また、中性子の反応断面積が大きい水素を多く含むため、中性子の検出効率が高く、高速中性子でも検出可能かつ潮解性がないという特徴を有する。一方、既存の有機シンチレータは低融点で温度上昇による劣化が起こりうる。そこで既存の有機シンチレータより高融点で、高速応答・高発光量な有機結晶の開発を行った。本年度は昨年度に引き続き、発光を司るπ結合を含むものを中性子シンチレータ候補材料として結晶育成・評価した。特に昨年度の育成で有望な特性を示したCarbazoleの一部置換分子やBis-MSB等の結晶育成を行った。これらの結晶を用いて、150℃までの温度特性を測定し、高温環境でも発光特性の劣化が少ないものを見出した。また、検出器応用に向けて、昨年度2インチ径育成に成功したp-terphenyl結晶からアレイを作成し、こちらに中性子線源から高速中性子を照射し、撮像に成功した。更に、α線、γ線に対するシンチレーション減衰曲線から、粒子波形弁別を試みこちらも成功した。有機物結晶の発光原理であるπ結合のまわりの電場構造(配位子場)の変化と発光波長・蛍光寿命などの関連を系統的に調べるため、育成結晶を用いて、発光量とπ電子密度の関係やα線、γ線に対する発光量とπ電子密度との関係を調べたところ、それぞれ強い相関を示した。
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IEEE Transactions on Nuclear Science
巻: - ページ: -
10.1109/TNS.2020.2996276
Optical Materials
巻: 94 ページ: 58~63
https://doi.org/10.1016/j.optmat.2019.04.051
http://yoshikawa-lab.imr.tohoku.ac.jp/