本申請研究ではNaフラックス法を用い、低転位GaN結晶の高純度化及び大口径化基礎技術開発を行った。ポイントシードと呼ばれる微小なGaN結晶を種結晶とし、横方向成長させることで低転位領域の拡大を目指した。近年開発した低液位フラックス成長では低転位化に成功したものの原料が枯渇し大口径化及び高純度化が困難であった。そこで本申請研究では以下の2つの課題に取り組んだ。 1. 低液位フラックス成長において、窒素溶解量を更に向上し結晶を高純度化(酸素濃度<1立法センチメートルあたりに10の18乗個)する。坩堝からの酸素不純物の溶け出しも抑制する。 2. Ga原料を連続的に供給する機構を開発することでGaN結晶の持続的成長(成長速度100 um/hを維持)を実現し、大口径化の基礎技術を確立する。 上記の目的に対し、初年度においてはリチウム添加による窒素溶解量の向上、酸素不純物源であるアルミナ坩堝以外の坩堝材検討を行った。リチウム添加量を0.3 mol%、かつタンタル坩堝を用いてGaN結晶を作製したところ、結晶中酸素濃度を1立法センチメートルあたりに10の17乗個台まで低減することに成功し、目標を達成した。最終年度においては、大型装置において高速成長及び大口径化に取り組んだ。フラックス液位を低くするのに加え、過飽和度調整を行った結果、145um/hでの高速成長を実現したことに加え、従来8mm程度であった結晶サイズを20mm程度まで大口径化することに成功し、1mm径の微小種結晶からの成長においても大型化可能であることを実証した。本研究成果により、従来法では実現できなかった、1cm角あたり10の4乗個以下の低転位、かつ高純度、大口径を全て同時に満たすGaN結晶が作製可能となった。当該GaN結晶を基に、これまで欠陥の影響で評価が困難であった真のGaNデバイス特性を明らかにすることができると期待される。
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