研究課題
本研究では、光通信帯光源が利用可能なTHz波発生検出用光伝導アンテナを実現することを最終目的としている。その候補材料として研究代表者は、Bi系III-V族半導体の超格子構造を独自に提案し、そのバンド構造内の欠陥準位の制御に向けた結晶内の点欠陥制御を目指している。具体的な超格子構造は特許出願の都合上ここでは割愛するが、最終年度は特に、低温成長GaAsBi内のアンチサイトAs(As_Ga)やそれ由来のホッピング伝導の検出を試みたので報告する。低温成長GaAsBiの分子線エピタキシー法による成長条件に関して、海外のグループが報告しているラングミュアの吸着等温式にまず着目した。270℃よりも低温で成長することによる結晶構成元素の不十分なマイグレーションを反映した係数を式に独自に取り込むことで、成長条件とBi含有率の設計値と実験結果をほぼ完全に一致させられるようになった。この成長条件を用い、250℃でBi分子線量のみを変化させて成長し、Bi含有率を変化させたGaAs(001)基板上低温成長GaAsBiのホール効果測定をvan der Pauw法を用いて行った。ホール係数、抵抗率、移動度はそれぞれ、これまでに報告されている低温成長GaAsの各値に類似のものとなり、低温成長GaAsBi結晶内にアンチサイトV族元素の点欠陥が取り込まれている可能性が示唆された。現時点では低温成長GaAsに倣い、このアンチサイトV族元素はAs_Gaであると想定している。この抵抗率から求めた導電率と、低温成長GaAsBiとGaAs基板の格子不整合度から算出したAs_Gaの密度に基づくAs_Gaの平均間隔は、平均間隔の増加に伴い導電率も増加する傾向を示した。これは、低温成長GaAsで確認されているホッピング伝導の傾向と真逆であり、低温成長GaAsBiの導電性はAs_Ga以外の欠陥の影響を受けることが示された。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Journal of Crystal Growth
巻: 548 ページ: 125852~125852
10.1016/j.jcrysgro.2020.125852
巻: 544 ページ: 125703~125703
10.1016/j.jcrysgro.2020.125703
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