研究課題/領域番号 |
18K14149
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉岡 宏晃 九州大学, システム情報科学研究院, 助教 (20706882)
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研究期間 (年度) |
2020-03-01 – 2022-03-31
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キーワード | 微小光共振器 / レーザー / インクジェット |
研究実績の概要 |
本研究では、これまで挑戦的であった無機マイクロディスクの常温作製という学術的課題を、有機で実績のあるインクジェット印刷法を用いて無機のマイクロディスク光共振器を常温常圧で印刷作製できる要素技術を確立することを目的とする。 当該年度においては、「結合型ディスクの開発および評価」について実施した。当初の研究計画は、①結合剤導入インクの開発と印刷最適化、②結合剤の架橋処理(レーザー露光)とシリカ化(紫外露光)、③結合型ディスクの構造評価、④表面粗さを含むFDTD法の計算(各粗さの計算)である。 ①については、結合剤にアクリル系オリゴマー(良好な結合が行えるため当初計画より変更)、溶媒にpropylene glycol monomethylether (PGME)を用いた結合型マイクロディスク用のインクの開発を前事業区間までに完了している。印刷の最適化については、まず良好なマイクロディスク構造が形成できる基板の選定をインクジェット印刷することで行った。その際、ピエゾ駆動型インクジェットヘッド、そのパルス電圧・幅の制御のためのピエゾコントローラ、メニスカス形成のための正負圧発生器からなるインクジェットシステムの各種パラメータを追い込みながら行った。 ②については、インクジェット印刷された結合型マイクロディスクが自然固化で十分に結合されていることが明らかになったため、規模を縮小した。なお、確認のため、接着剤への紫外光照射による表面改質実験を行ったところ、わずかな屈折率の変化(エリプソメーターによる)はあったが、目的とする耐久性向上の観点からは優位性が無かった。 ③については、光学顕微鏡・原子間力顕微鏡を用いて印刷された結合型ナノシリカマイクロディスクのサイズやエッジのテーパー角などの形状評価を行った。 ④については、粗さ構造を有する3Dモデリングの基礎骨格を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、「結合型マイクロディスクの作製およびその評価」に向け、①結合剤導入インクの開発と印刷最適化、②結合剤の架橋処理(レーザー露光)とシリカ化(紫外露光)、③結合型ディスクの構造評価、④表面粗さを含むFDTD法の計算(各粗さの計算)に関する項目を進めた。以下の達成内容より、研究全体としておおむね順調に進捗している。 ①については、結合剤にアクリル系オリゴマー、溶媒にpropylene glycol monomethylether (PGME)を用いた結合型マイクロディスク用のインクの開発を前事業区間までに完了しており、印刷の最適化についても、良好なマイクロディスク構造が形成できる基板の選定、ピエゾ駆動型インクジェットヘッド、そのパルス電圧・幅の制御のためのピエゾコントローラ、メニスカス形成のための正負圧発生器からなるインクジェットシステムの各種パラメータの最適化が完了している。 ②については、インクジェット印刷された結合型マイクロディスクが自然固化で十分に結合されていることが明らかになったため規模を縮小したが、当初予定していた接着剤への紫外光照射による表面改質実験を行い、目的とする耐久性向上の観点からの優位性についての評価を完了している。 ③については、光学顕微鏡・原子間力顕微鏡を用いて印刷された結合型ナノシリカマイクロディスクのサイズやエッジのテーパー角などの形状評価を行い、形態として良好なサンプルが得られたことを見出している。 ④については、実験的なレーザー発振の有無を確認して損失の評価を進めるため、粗さ構造を有する3Dモデリングの基礎骨格の開発にとどまったが、回折格子のような周期構造を粗さ構造に見立てた3Dモデルを構築する新しいプログラムを開発している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては、凝集型・結合型ディスクの性能比較(光暴露耐性評価、レーザー発振評価)を行い、最終年度として研究を完了させるため学会発表や原著論文の投稿による成果発表を計画している。実施予定内容は、凝集型・結合型ディスクの光暴露耐性・熱耐久性の評価、WGMレーザー発振の基礎評価、表面粗さを含むFDTD法の計算(光損失比較)、青色領域でのWGMレーザー発振評価、である。 凝集型・結合型ディスクの光暴露耐性・熱耐久性の評価については、光励起装置からの光源を凝集型、結合型ディスク双方に照射し、露光前後の表面粗さを測定し光暴露に対する耐性の比較評価を行う。 WGMレーザー発振の基礎評価については、レーザー発振が容易な赤色領域で従来の532nm光励起装置を用いて発振スペクトル、入出力特性およびQ値を測定して評価を行う。 表面粗さを含むFDTD法の計算(光損失比較)では、計算を進め光損失の評価を行う。 青色領域でのWGMレーザー発振評価では、レーザー発振が挑戦的な青色領域でレーザー発振実験を行い、発振スペクトル、入出力特性およびQ値を測定し評価を行う。
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