本研究では、無機マイクロディスク光共振器の常温作製のための要素技術確立を志向して、有機系で実績のあるインクジェット印刷法で無機ナノ粒子とポリマーを併用した有機無機ハイブリッドマイクロディスク光共振器の開発を目的とする。当該年度においては、「凝集型・結合型ディスクの性能比較評価」について実施した。当初の研究計画は、①各ディスクの光暴露耐性・熱耐久性の評価、②WGMレーザー発振の基礎評価、③表面粗さを含むFDTD法の計算、④青色領域でのWGMレーザー発振評価である。 ①では、結合ポリマー有・無の両方のシリカナノ粒子分散インクで作製された凝集型・結合型マイクロディスクの耐久性について、②のレーザー発振評価と並行しで実施した。赤・橙色領域で発光するRhodamine系色素を添加した両マイクロディスクを、532nmの励起用ピコ秒Qスイッチパルスレーザーを用いて発振評価を行ったところ、結合型は良好なWGMレーザー発振を得たが、凝集型ではレーザー発振し得る励起光強度では構造を維持できなかった。つまり、結合ポリマーを用いない凝集型はレーザー素子としては向かないことが明らかになった。 ③では、独自のFDTD法による計算解析により、ナノ粒子が分散した領域(二次元)に光が斜入射した際のS、P偏光それぞれの光伝搬について解析を行った。結果として、用いたナノ粒子のサイズ領域では大きな散乱は確認されず、ナノ粒子の集合体であるマイクロディスクは光共振器として十分に利用できることを明らかにした。 ④では、結合型マイクロディスクレーザーの短波長側での発振可能領域の拡張について評価を行った。シリカナノ粒子分散インクとの相溶性の関係で緑よりも短波長域で発光する色素を用いることができなかったが、相溶性を有しこれまでより短波長側の黄・橙色領域で発光するRhodamine系色素を用いたマイクロディスクで発振が示唆された。
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