研究課題/領域番号 |
18K14156
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
牧野 孝太郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (30727764)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | テラヘルツ波フォトニクス / 相変化材料 / アモルファス / テラヘルツ波分光 |
研究実績の概要 |
当該年度では、Ge-Sb-Te(GST)相変化材料の可逆的なアモルファス-結晶変化がテラヘルツ波に対して示す光学的な特性の変化を評価し、適切な材料とデバイスの設計を行った。材料にはメモリデバイスにおいてもよく用いられるGe2Sb2Te5を採用した。これには、この組成が比較的安定な相変化を示し、繰り返しの相変化に耐えうることと、後述のテラヘルツ波測定の結果より十分な性能が期待できるためである。 テラヘルツ波を用いた分光として、時間領域分光を採用した。この測定では、ピコ秒のテラヘルツ波パルスをサンプルに照射し、透過したパルスの電場波形を時間の関数として測定し、サンプルの無い状態での結果と比較することで光学定数などを得る手法である。サンプルとして、100 nmのアモルファスGSTをスパッタリングにより成膜したものを使用した。また、アモルファスGSTを150度から400度の範囲でアニールした物を用いた。アモルファスGSTは加熱(アニール)によりcubic結晶相を経て、hexagonal結晶相へと変化する。これに伴い、半導体状態から金属的な状態へと転移するが、これに伴う透過率の大幅な変化が観測された。また、アニール温度を制御することで、徐々に変化を誘起することができることが確かめられた。詳細な解析の結果、複素屈折率と複素誘電率が大幅に増加することが確認された。これらの結果より、提案したテラヘルツ波デバイスの可能性が確かめられ、また、新たにテラヘルツ波センシングデバイス応用への可能性を着想するに至った。この他、レーザーパルス照射による相変化制御システムを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、テラヘルツ波デバイス応用に適した材料の選定、基礎的な評価、光学的な相変化制御に成功している。また、当初想定していたデバイスに加え、より魅力的な応用の具体的なアイデアを着想するに至っており、概ね計画通りに進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに得られた成果を基に、シミュレーション等によるデバイスの設計、デバイスの試作とその特性評価を行う計画である。特にプラズモニクスデバイスの評価を実施する。また、デバイスに組み込んだ場合の相変化材料の相変化制御手法の確率を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の物品の購入及び旅費については、本研究に使用可能な別予算を用いた。また、一部の装置を共同研究により使用することができたため、物品の購入を減らすことができた。
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