当該年度は、相変化材料の相変化制御手法の開発を前年に引き続き行った。残念ながら、緊急事態宣言の発令などの影響を受けて実験などを計画通りに行うことができなかったため、研究の進行に遅れが生じたが、シミュレーションによる解析を実施し、研究を行った。前年度に局所的に相変化を誘起できるように光学システムを構築したが、これを改良し、より詳細なパターンの描画と、レーザー強度の変調が可能になった。また、描画システムの制御方式を見直し、より高速に描画が実施できるようになった。相変化を誘起したサンプルについて、表面プロファイルや構造の解析を実施し、相変化が誘起されていることを確かめた。残念ながら、深さ方向のプロファイルまでは評価できなかったが、相変化は表面付近のみで誘起されており、深さ方向に進行させるための改良が必要であることがわかった。 シミュレーションについては、センシング応用に向けたプラズモニックデバイスの設計をすすめた。また、これまで想定していたデバイスでは広い面積を相変化させ、その応答を変調するものであったが、金属構造との組み合わせによって比較的小さい面積の相変化膜を変調させればデバイス全体の特性を変化させられる構造の着想を得ることができた。加えて、テラヘルツ波時間領域分光測定装置にヒータを設置し、プラズモニックデバイスの特性を評価する準備を整えた。このほか、GST以外の相変化材料としてVO2にも着目し、共同研究者らとテラヘルツ波特性の温度依存の評価を実施した。
|