研究課題/領域番号 |
18K14157
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
張 承賢 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (90782300)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 多数基立地サイト / マルチユニット影響 / 動的リスク評価 / マルコフ過程 / ベイジアンネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究では、「マルチユニット影響評価モデル」と「動的リスク評価手法」の構築を行い、両者を組み合わせることによって多数基立地サイトにおけるユニット間の相互影響を考慮した新しい動的リスク評価手法の構築を目的とする。この新しい手法を用いて福島第一原子力発電所を対象とする解析を行うことで、今まで不明であったマルチユニットによる影響について定量的な評価が可能となり、マルチユニットサイトにおけるシステムの脆弱性に関する新たな知見を得ることが期待できる。更に、非常用発電機の復旧、ユニット間の電源融通、オフサイト支援等を想定する解析を行うことで、アクシデントマネジメント策の有効性に関する定量的評価も期待され、原子力システムのリスク低減に貢献できる革新的な研究である。本研究では、上記の目的を達成するために次のタスクを実施する予定である。 タスク1:マルチユニット影響評価モデルの構築。文献調査等を行い、マルチユニット影響を分類し、マルチユニットの影響を定量的に行うモデルの構築を行う。要因間の因果関係を評価するためには、ベイジアンネットワークモデルの導入を検討する。またマルコフ過程によるモデルを導入することによってシステムの状態に依存する状態遷移確率を評価することによってマルチユニット影響によるシステム状態の変化を評価することが可能となる。 タスク2:動的リスク評価手法の構築。マルチユニット影響によって時間進展とともに変化するシステムの状態に依存するシステムモデルを構築する。またプラントシステムの状態を解析する数値解析コードを用いて、システムにおける物理量(システムの情報)を評価する。システム状態の解析とマルチユニット影響モデルを組み合わせることで、マルチユニットによるシステムにおける物理量の変化を考慮したシステム状態解析が可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定通りにマルチユニットの影響について文献調査を行った結果、マルチユニットの影響を6種類(Initiating events, shared connections, identical components, proximity dependencies, human dependencies, and organizational dependencies)に分類することができた。この6つの中、human dependenciesとorganizational dependenciesを除くマルチユニットの影響については、モデル化を行った。しかし、上記の2つのモデル化については検討中である。現状のモデルでは、連続マルコフ過程モンテカルロ法を用いてモデル化を行っているが、ベイジアンネットワークモデルによる因果関係の考慮したモデル構築を検討している。現在のモデルを用いてツインユニット(2ユニット)システムに適用した評価では、マルチユニットの影響によってシステムの状態が悪化するシナリオへの状態遷移が評価できることが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に構築したモデルでは、4つのマルチユニット影響を考慮したシステムの状態変化を評価することが可能であった。しかし、システムを構成する機器、環境の変化が、システムに与える影響について定量的な評価モデルを入れる必要がある。従って、本年度中には、昨年度に構築したモデルにベイジアンネットワークモデルを組み込み、マルチユニットシステムにおける因果関係を考慮したモデルの構築を行う。 また、簡単な2ユニットシステムを対象にした数値モデルを構築し、システムにおける物理量の変化を評価する。こちらのモデルにマルチユニット影響モデルをカップリングさせることで、マルチユニット影響によるシステムの物理量変化を評価することができると考えられる。このモデルを使って福島第一原子力発電所の事故のシナリオを対象に評価を行うことによって、マルチユニット影響によるシステムにおけるリスク変化について評価が期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
モデル構築に予想より長い時間が必要であったため、モデル構築のためのソフト購入や、計算機の購入が遅れることになったため。旅費に関しては、学会にて発表できるレベルに到達していなかったため、昨年度の旅費の使用はなかった。研究がこらから順調に進むにつれて本年度中には、2回ほど国際学会で研究成果を発表する予定である。
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