本年度は、マルチユニット影響による環境変化がシステムに与える影響に着目し、環境変化によるコンテクスト(Context)の影響を考慮した人的過誤率評価モデルについて検討を実施した。マルチユニットによる環境変化は、複雑かつ多様であるため、既存の人間信頼性手法による人的過誤率評価は困難である。 従って本研究では環境変化によるコンテクストの影響を、時間余裕、作業要因のストレス、作業要因の熟練度、また作業の際に用いる手順書といった4つのパラメータに縮約させて表し、環境変化がこれらのパラメータに与える影響については、関連するデータがないが要因間の因果関係を評価することが可能であるため、ベイジアンネットワークを用いた論理的なモデルを用いることで、定量化を試みた。さらにこれらのパラメータが人的過誤率に与える影響については、その度合いが曖昧であり、関連する先行研究、データ等がなく、また論理的な構造を持つモデルを用いることが困難だったことから、曖昧性を数学的に表す手法であるファジィ理論を用いることで定量化を試みた。 時間余裕に関しては、既往の研究で用いられるTime line analysis手法を用いて評価し、ストレスに関しては関連文献を参考に相対的な値としてストレスを定量化した。熟練度と手順書については、熟練の度合い、手順書の読みやすさという度合いを定量化するパラメータを定義することが困難であったため、ファジィルールを用いてこれらの影響を考慮した。 評価の結果、多様なマルチユニット関連事象の発生による環境変化が生み出した多様なコンテクストの影響による時間余裕及びストレス変化が人的過誤率に与える影響について定量的に評価することが可能であった。さらには熟練度の影響及び手順書の読みやすさが、人的過誤率に与える影響についても定量的に評価することが可能であった。
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