研究課題/領域番号 |
18K14159
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
小川 達彦 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究副主幹 (20632847)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 核分裂 / 二次中性子 |
研究実績の概要 |
2021年度の理論研究に関する成果は、核分裂モデルFIFRELINを燃焼計算コードDCHAINと接続することで、FIFRELINが計算した残留核の計算結果を基にした発熱の計算をしたことである。前年度までFIFRELINとDCHAINの接続計算は実験値と合わず、特に初め1秒以内の発熱が過大に評価されていた。原因の調査は難航していたが、FIFRELINのバージョンアップとDCHAINの利用するライブラリ変更を行ったところ、よく一致するようになった。このことからして過大評価の原因は、FIFRELINが核分裂片の生成を計算するうえで、各アイソトープのうち質量の大きい側を過大評価していたことと判明した。新しいFIFRELINはその過大評価を改めたため、その核に起因する速い発熱成分が減少した。また、DCHAINも2000年以降に再評価されたJENDL、ENDFに基づく崩壊データを使用することで、一致精度を満遍なく改善できることが分かった。上記の研究成果についてFIFRELINの開発チームとも議論し、発表方針について合意を得るところまで達成している。 実験についても2021年度に3回のビームタイムを実施し、Pb-208(O-18,fission)データの取得に成功している。O-18の核子移行反応により、10種類以上の残留核が生じたことは、それに応じた複合核が生成したことを示しており、さらにその複合核の検知と同期して対向する多芯比例計数管対に核分裂信号を起こしたことから、核分裂反応を検知できたことも確認できている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は当初計画通りに原子力機構のタンデム加速器において実験を行い、Pb-208(O-18,fis)反応についてデータを取得するに成功し、取得したデータの解析や信号間のコインシデンスのフィルタ及びイベント内のエネルギー収支の計算についても進展させることができた。 異なる検出器間でコインシデンスを取る際にノイズが多く発生する点が解決できれば、最終データが完成するところまで進捗している。 また、2021年度は核分裂モデルFIFRELINのコードインタフェース開発に関する研究も進捗し、データの解析に加えて、論文を執筆し、共著者との間で、執筆内容について合意することができたことから、おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、補助事業期間の最終年度として、実験結果の解析を終了し、理論研究に関する論文投稿や学会等での成果発表を行う。実験結果は、核分裂反応の運動学を再構築した後、その核分裂反応と同期する中性子や荷電粒子の放出を識別することで、どのような核分裂に対して粒子放出が起こったのかを明らかにする。 理論研究については、並行して進めていた核分裂モデルFIFRELINに関して、他コードとの接続インタフェースや崩壊後の時間発展を計算する手法について論文化の準備を行う。 論文発表は、サブアクチノイドの核分裂確率や核分裂片質量分布に新規性があるので、それを焦点とした論文を執筆する予定である。 また、中性子の放出角度分布を、複合核の角運動量と関連付けることも検討している。学会発表は、新型コロナウイルス感染症の感染状況に伴う渡航規制次第ではあるが、本研究のプレゼンスを向上させるためにも必須であり、何らかの機会を見つけ発表することを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に参加を予定していた学会が新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受けて中止になった及び原子力機構のタンデム加速器において発生した装置故障から復旧するまでに1年程度停止していたことにより、予定していた実験が実施できなかったことから、学会参加に係る費用及び実験に係る費用が次年度使用額として生じることとなった。次年度使用額は、2022年度において、予定している実験や論文投稿、学会参加等の成果発表に係る費用として使用する。
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