今年度は、核分裂の計算モデルFIFRELINを燃焼モデルDCHAINや輸送計算コードPHITSと接続する計算手法について、論文を完成させ採択まで至った。特にU-235の熱核分裂から生じる崩壊熱の時間変化を正確に再現するには、Scission時点の核の収量と核崩壊データベースの精度が鍵になることが重要な発見である。さらに、FIFRELIN-DCHAINの組み合わせがその計算を可能にすることも明らかにした。 また、2021年にFIFRELINが改良されたことに注目し、その改良版を使ってU-235熱核分裂から生じるガンマ線のエネルギースペクトル再現にも成功した。0-20MeVまでの範囲でγ線スペクトルを測定した先行研究があるが、8MeV以上の成分がどのようなメカニズムで生じるのかは、その研究でも明らかになっていなかった。FIFRELINによる計算は、軽い側の核分裂フラグメントの一部が高エネルギーガンマ線の生成に寄与していることを明らかにした。さらに、核分裂片が高エネルギーガンマ線を生じるには、分裂直後に基底近くまで脱励起する必要があるため、分裂直後の角運動量の分布がその再現に強く影響することも分かった。一方、基底近くに角運動量の大きな状態があるかどうかも重要だと当初予測したが、必ずしもそれには依らないという示唆が得られたことになる。この成果は、2023年度の学会・論文発表を予定している。 上記の計算コードFIFRELINはライセンス条件のため国産コードに使えないが、核分裂後のガンマ線放出の部分を担うモデルEBITEMの改良を行った。FIFRELINでの経験を参考に、古い準位構造データベースを、IAEAが公開するRIPL-3やEGAFに差し替えることで、今までより実験値を正確に再現できるモデルEBITEM Ver.2を完成し、論文投稿まで到達した。
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