研究実績の概要 |
本研究では,アクチノイドイオンの①原子価変化,②コロイド・微粒子化,③汚染水中で想定される無機イオンとの相互作用を明らかにすることによって,福島第一原子力発電所事故で発生した汚染水に近い原子価変化やコロイド反応などを含む複合反応系の解明を目指す.令和2年度は,②コロイド・微粒子化について,電解還元により形成したウラン析出物の粒子成長と③汚染水中で想定される無機イオンとの相互作用について,硫酸イオンの影響を調査した.②ウランの電解析出により形成したウランコロイド粒子の粒径分布を測定したところ,pH 2で電解析出した直後のウランコロイドは,42と146nmの粒子が多く存在し,24時間経過すると150nm以下の割合が減少し,265nm以上の割合が上昇した.これは、時間経過に伴い小さい粒子同士が集まり大きく成長したためと考えられる.また,pH 2,3,4で形成した粒径は,40~150nm,160~300nm,200~400nmと,pHが高くなるとともに大きい粒径粒子が形成する傾向であることが分かった.③硫酸イオン存在下での電気化学水晶振動子マイクロバランス測定を行ったところ, 硫酸イオン添加した場合,ウランの析出速度と析出量が減少することが示された.これは,電解前のウラニルイオンと硫酸イオンとの錯形成により,フリーのウラニルイオン存在比が減少することによって,析出量が減少していると考えられる.また,析出量が減少することにより,ウラニルイオンの還元種が飽和し,還元量も減少していることが示された.以上より.硫酸イオンはウランの電解析出を抑制する効果があることが分かった.
|