研究課題/領域番号 |
18K14161
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
萩原 大樹 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 福島研究開発部門 福島研究開発拠点 福島環境安全センター, 研究職 (20773914)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ガラス質粒子 / HEPAフィルター / Type A |
研究実績の概要 |
本研究では、環境中に分布する福島第一原子力発電所事故由来の放射性物質を含むガラス質粒子の存在形態やその形成過程を把握することで、事故時の炉内事象の解明を目指している。 令和元年度は、ガラス質粒子の生成機構を検証した。特にガラス質粒子を構成するSiの起源を特定するため、平成30年度に堆積物からの単離に成功した、TypeA不溶性Cs粒子と、最近の研究により指摘された沸騰水型原子炉施設で使用されているHEPAフィルタ材を対象に、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)を用いて構成元素を分析し、両者の比較を行った。 HEPAフィルタ材に含まれる主要な構成元素はSi、Zn、Al、Naであり、TypeAのそれとほぼ一致した。さらに、TypeAやフィルタ中に微量でやや不均一に含まれるZnに着目し、両者のSiO2、ZnO比を調べた結果、既報のTypeAの分析値と同様に、負の相関関係を示した。これは、SiO2、ZnOの比重は1:2であり、粒子の重量がほほ同じになるような構成比を反映している。したがって、質量と気象条件が同じであれば、同一地点に沈着することで説明が可能である。また、高真空下でグラスファイバに電子線を照射すると、温度上昇により、直径数μmサイズの球形Si粒子を形成することが可能であった。 これらの結果より、放射性物質を含むガラス質粒子がHEPAフィルタ材を起源として生成した可能性が示唆された。今後は、炉心起源エアロゾルの構成元素も考慮した検討や、HEPAフィルタ材からの粒子生成過程に関する検討が必要となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は当初の計画通り、放射性物質を含む粒子のSi起源について考察することができたため、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
グラスファイバから、球形ガラス質粒子の形成条件の詳細を検討する。また、放射性ストロンチウムを含むガラス質粒子を単離し、質量分析装置に供するための試料作製に注力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画において想定していた成果発表より実際の発表件数が少なくなったこと等により、次年度使用額が生じることとなった。次年度使用額は、令和2年度分の経費と合わせ、分析に係る物品購入費や成果発表に係る費用として使用する。
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