研究課題/領域番号 |
18K14163
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
北垣 徹 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 福島研究開発部門 福島研究開発拠点 廃炉国際共同研究センター, 研究職 (30770036)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ジルコン / 福島第一原子力発電所事故 / その場観察 / 溶解 / MCCI / 燃料デブリ |
研究実績の概要 |
本研究では、数十年間水に浸漬した福島第一原子力発電所(1F)の溶融炉心とコンクリートの反応(MCCI)生成物中に生成していると推定するジルコンから、事故時の温度や酸素分圧の推移を推定可能とするため、数十年間のジルコンと水との反応による形状、性状の変化を予測可能とすることを目的としている。これまでに、水との反応性評価に用いる模擬MCCI生成物を異なる温度、酸素分圧の条件下で作製し、ジルコンの生成挙動を確認するとともに、酸素分圧の推定に用いる模擬MCCI生成物中のセリウムの価数をXAFSにより測定した。また、ジルコン鉱物の一般的な溶解挙動を把握するため、破砕して粉体化した天然ジルコンの溶解速度を取得した。 この結果、1Fを模擬したコンクリートと酸化ジルコニウム等を1300℃~1500℃に加熱して作製した模擬MCCI生成物中において、数十μm程度のジルコンが生成することを確認した。また、異なる酸化雰囲気で作製した模擬MCCI生成物中のセリウムの価数を測定した結果、雰囲気に応じてセリウムの3価と4価の割合が変化することを確認した。これより、1FのMCCI条件においてもジルコンが生成する可能性が高いこと、ジルコン中のセリウムの価数を分析することで事故当時の溶融プール中の酸素分圧を技術的に推定できることを示した。 粉体化した天然ジルコンをpH1、7、13の水溶液中に2ヵ月程度浸漬し、溶液中のZr、Si濃度から溶解速度を算出した結果、Zrの溶解速度はSiの溶解速度に比べて10~1,000倍程度遅く、ジルコンは調和溶解しないこと、pH7の溶液中では溶解速度が遅いことを確認した。本結果により、2ヵ月程度のジルコンと水との反応により、ジルコン表面は平均して数十nm程度溶解することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では模擬MCCI生成物を作製し、原子間力顕微鏡等を用いて模擬MCCI生成物中のジルコンの溶解その場観察までを実施する計画であったが、模擬MCCI生成物の作製条件の検討、溶解その場観察に用いる外部機関の原子間力顕微鏡の利用手続きに時間を要したため、当初の予定よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当該年度に実施できなかった模擬MCCI生成物及び天然ジルコンの溶解その場観察と合わせて、当初から計画しているウランを含む模擬MCCI生成物の作製、浸漬による形状、性状変化の評価を実施する。当該年度分の溶解その場観察は数日の測定を数回行う程度であるため、当初の計画をほぼ変更することなく、目的を達成できる見込みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は研究代表者が所属する研究機関が有するTEMを用いた試料観察を実施予定であり、これに使用する観察ホルダーの購入を計画していたが、施設の都合上TEMの使用が困難となったため、観察ホルダーの購入を中止した。以上が、次年度使用額が生じた主な理由である。 次年度は外部機関が有するTEMの使用許可を既に取得しているため、主にこのTEMを用いた観察にかかる費用として次年度使用額を使用予定である。
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