研究課題/領域番号 |
18K14165
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
福田 大祐 北海道大学, 工学研究院, 助教 (80647181)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 遅すぎず・速すぎない載荷 / 爆燃 / 破砕シミュレータ / 高速破砕 / マルチフラクチャー / 岩質材料 / 岩石・岩盤 |
研究実績の概要 |
本年度は,研究計画に従い,遅すぎず・速すぎない載荷圧を生じさせることが可能な非火薬破砕剤NRC(テルミット反応)を用いて各種計測・実験を実施した.具体的には,韓国の全北大学において,アクリルブロック中にNRCを装填し,独自開発の圧力センサーを用いて生成圧力の経時変化を計測した.また,高速度カメラを用いてテルミット反応の空間伝播過程を可視化し,アクリルの破砕パターンも調査した.その結果,圧力波形は大略100マイクロ秒程度でピーク圧に達することを明らかにした.他方,破砕パターンについては,当初期待していたマルチフラクチャーではなく,供試体を2分するようなフラクチャーが生成した.この原因については現在考察中である.さらに,韓国の全北大学の屋外破砕施設において,片麻岩および花崗岩ブロック(68cm角)を複数用意し,そこにNRCを装填した装薬孔を施し,本年度は片麻岩の破砕実験を行った.この場合もアクリルと同様に,マルチフラクチャーではなく,供試体を2分するようなフラクチャーが生成した.ただし,片麻岩は潜在的な弱面を有しているため,現在その破砕メカニズムを考察している. 他方,シミュレーターの開発については,昨年度の成果として提案したHybrid FEM/DEM法ベースの破砕シミュレータの不安定化解消法に基づき,さらに多くの検討を行い高度化に成功している.これには,昨年度目標として設定した原位置応力下における複雑岩盤破砕シミュレーションの実現も含む.ただし,【現在までの進捗状況】【今後の研究の推進方策】で述べるように,最も重要な課題である破砕シミュレータと爆燃シミュレータのカップリングについては,今後さらなる検証が必要である. いずれにせよ,本年度の検証過程で得た成果をまとめ,査読付きの国際誌論文4件採択,査読付き国際学会プロシーディング5件および国内学会発表1件の成果が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,実験面・シミュレータ開発面から研究に取り組んだ.そこで,これら2側面の観点から進捗状況を報告する. 【実験面】:夏に韓国の全北大学を訪問して実験を行った際に,NRCの薬量設計・調整に当初想定していたよりも長時間を要し,その後の実験実施がやや遅れた.また,韓国の全北大学の屋外破砕実験場に作成した岩石ブロックを移送する際に悪天候に恵まれたため,滞在期間中に終える予定であった片麻岩と花崗岩の破砕実験を完遂することができなかった.そのため,来年度に可能であれば韓国を再度訪問し未実施の実験を完了したいと考えている. 【シミュレータ開発面】:本研究ではGPGPU高速並列計算技術に基づき,『爆燃現象に伴う高速載荷によって生じる岩質材料の高速かつ複雑な破壊過程解析法(以下DFPA)』と『爆燃過程解析法(以下Deflag)』をカップリングしたハイブリッドシミュレータの開発に取り組んできている.DFPAについては,昨年DFPAの深刻な不安定化に直面し,その解消法を提案した.しかしながら,これを3次元解析に適用する場合,並列計算技術を用いても莫大な計算時間が必要となってしまった.そこで,本年度はDFPAの計算アルゴリズムにさらなる改良を加え,この莫大な計算時間の大幅な削減に成功した.これにより,DFPAについては,本研究で目標とするレベルまで改良を達成できたと考える.他方で,Deflagについては,粒子法ベースのシミュレータを開発し,複数のカップリングアルゴリズムを試してきたが,未だ満足のいく状態には達していない. 以上のような理由から,やや遅れていると判断した.ただし,研究進捗は遅れているものの,本年度取り組んだ研究により,着実に成果は得られてきており,成果をまとめた論文が質の高い国際雑誌に採択された点は重要であると考える.
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今後の研究の推進方策 |
【現在までの進捗状況】でも述べたように,実験面では未完了の破砕実験があり,本年度はこれらの実験を完遂させたい(コロナウイルスの影響により渡航できるかは現時点で不明であるため,状況を判断して殉柔軟に対応していく).そして,本年度破砕実験に供した片麻岩ブロックと比較して潜在的な弱面の少ないインタクトな花崗岩ブロックを用いる場合,NRCの載荷特性により装薬孔周辺にマルチフラクチャーが造成するかを検証していきたい.その検証を行うためには,当然DFPAとDeflagのカップリングを成功させる必要がある.最終年度では,Deflagには粒子法ベースではなく,有限体積法ベースで開発を行うことにし,埋め込み境界法を用いて上記カップリングの実現を目指す.そして,本年度の実験で明らかにしたNRCの生成圧力特性をシミュレータにFeedbackした数値解析を行い,片麻岩ブロックや花崗岩ブロックで得られる破砕パターンの検証・再現解析を実施してきたい.また,既に実施済みのニトロメタンの爆燃破砕実験結果対しても,同様に開発したシミュレータを用いた数値解析を実施し,マルチフラクチャーの造成メカニズムについて明らかにしていきたい. 以上より,爆燃破砕シミュレータの開発を実現し,これを用いて『装薬孔周囲での圧砕を最小化し、フラクチャー数・伸張量を最大化できるか』について検討していきたい.また,種々の現位置応力状態や地質状態を想定し、爆燃現象における圧力パラメータや生成ガスのフラクチャー内の移動形態等の観点からパラメトリックな解析を包括的に実施していきたい.当然,得られた成果を積極的に論文にまとめ,インパクトファクターの高い国際雑誌への投稿を目指していく.
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