研究課題/領域番号 |
18K14166
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
丸岡 大佑 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (20753792)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 蓄熱体 / 相変態 / 鉄基合金 / 高温酸化 / アルミナイジング / 高温腐食 |
研究実績の概要 |
本研究では、Fe合金の相変態による潜熱と顕熱蓄熱を併用した固体蓄熱材料の開発を目的としている。本年度は潜熱蓄熱特性に対するMn添加量の影響と、Fe-Mn-C合金の高温耐酸化性の向上について調査した。 Mn添加量を2.5%にした場合、Fe-C合金と比較して、相変態温度の低下が認められ、一方で潜熱量は大きな変化は認められなかった。しかしそれ以上のMn添加濃度では、相変態が1度認められるものの、繰り返し相変態により潜熱量の低下が認められた。そのため、本研究で提案している蓄熱体へのMn添加濃度は2.5%程度が望ましいことを見出した。 Fe-Mn-C合金を想定するプロセス温度である1000℃で酸化処理したところ、24hで試料重量が40%程度に達し、高温酸化雰囲気では使用が困難であることを確認した。耐酸化性向上のためにAlなどの第4元素の添加は相変態の維持の観点から困難であったため、本研究ではパックセメンテーション法によって材料表面にAlを濃化させるアルミナイジングを実施した。アルミナイジングによって試料表面にAl濃化層を生成させたFe-Mn-C合金の断面観察より、材料表面にはFeとAlの金属間化合物が生成されていた。材料を同条件で酸化処理したところ、試料の重量変化は1%程度にまで抑制された。実験後、試料断面を観察したところ、FeとAlの金属間化合物だった相はFe2O3とAl2O3との混合層となり、成長したAl2O3相同士がつながり、保護性酸化皮膜を生成することで耐酸化性を担保したことが示唆される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、Fe-Mn-C合金の潜熱蓄熱挙動について調査し、望ましいMn添加量を見出すことができた。また耐酸化性が非常に乏しく、一般的な耐酸化向上手法を用いることが困難な蓄熱体において、パックセメンテーション法によるアルミナイジングを用いて耐酸化性の著しい向上が見られた。ただし、耐酸化性の向上により、相変態に寄与するFe-Mn-C合金部が減少したため、潜熱量の低下が見られた。いくつかのアルミナイジング条件を検討することでAl2O3層の薄層化には成功したが、Al濃化層の成長挙動は不明な点が多く、現象論的解釈にとどまっている。そのため、2020年度はAl濃化層およびAl2O3層の成長機構について調査することを検討している。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度は、Fe-Mn-C合金のアルミナイジングによって生成したAl濃化層および酸化後のAl2O3層の成長機構について調査する予定である。Al濃化層にはFeとAlとの金属間化合物を生成することを明らかにしているが、金属間化合物は様々な組成を取り、それらが生成することで多層構造を呈している。どの層がアルミナイジングによって成長するかは実験結果からの現象論的な解析しか進んでいないため、今後Al濃化層の成長モデルを提案することを予定している、またどの金属間化合物層がAl2O3の生成に寄与しているかについても不明であるため、それも合わせて検討する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前年度未使用分の予算を用いて物品や旅費の一部を執行できたため、次年度使用額が生じた
|