本研究では、Fe合金の相変態による潜熱と顕熱蓄熱を併用した固体蓄熱材料の開発を目的としている。2021年度はアルミナイジング処理したFe-Mn-C合金のAl濃化層生成過程ならびアルミナイジング処理後の蓄熱体の耐衝撃性について調査した。 Fe-Mn-C合金を800-1000℃でアルミナイジング処理した。800℃ではFeAl層のみが生成し、その後の大気酸化によって重量が増加を続けたため耐酸化性の向上は限定的であった。一方、アルミナイジング処理温度が900℃では初期にFeAl3層が生成し、その後試料内層部にFeAlが生成することを確認した。1000℃ではFeAl3層の上下層にFeAl層が認められた。900及び1000℃いずれの温度でも処理後の試料は大気中酸化による重量変化は1%程度であり、耐酸化性の向上が認められた。FeAl3の生成によって金属間化合物中のAl濃度が高くなり、大気酸化中にAlの酸化によりAl2O3が生成し、保護性酸化皮膜となることで耐酸化性を向上したと考えられる。 蓄熱体の耐衝撃性の検討のため、Fe-Mn-C合金球を作製し、アルミナイジングで良好な耐酸化性が得られた条件で処理した。処理後試料およびバイオマスをラボスケールのロータリーキルンに装入し、800℃、24hで回転させながら熱処理後、蓄熱球を観察した。Al2O3酸化層は実験後も連続的な皮膜を形成しており、耐衝撃性も良好であることを明らかにした。 結果として、Fe合金の相変態による潜熱と顕熱蓄熱を併用した固体蓄熱材料を開発し、その耐高温酸化性の向上に成功した。
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