研究課題/領域番号 |
18K14167
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
椋平 祐輔 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (60723799)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ボアホール検層 / 誘発地震 / 地熱 / 微小地震 / 断層面解 |
研究実績の概要 |
本研究を構成する3ステップのうち,本年度は以下のステップ1を実施した。 1 地震波形データ+地殻応力 期間: H30年4月~H30年12月: 地殻応力の絶対値・方向が既知である際,水圧刺激時のある間隙水 圧上昇(送水圧力)下で,せん断滑りを起こすことができるき裂面の向きは限定することができる。押し引き極性情報 によって求められたき裂面の向きに,地殻応力・送水圧力に調和的なき裂面の向きを融合させることによって,き裂面の向きを絞り込む。 上記コンセプトを実現するためのプログラムを実装し,実フィールドデータを用いて本手法の有効性を検証した。その結果,ほとんどの場合で,工学的に有効なほど,断層面の範囲を限定することができた。特に,注水圧力が小さい時,つまり水圧刺激の初期に発生する微小地震の断層面解の限定に非常に有効であることがわかった。これらの微小地震は,注水井戸近傍で起きることが多い。これらの断層面解の限定は井戸近傍のき裂システムを理解する上で大変重要であり,貯留層管理にとって非常に重要な情報が抽出できたことを意味する。さらに,かなりの不確定要素を含む実フィールドデータを用いた場合でも同様であった。地殻応力が不確実性を含む場合に関しても,シミュレーションを実施した結果,本手法によって限定される解の範囲は安定的であり,本手法が入力データが不確実な場合でも,多数の地球物理データを組み合わせることで,有意にかつ,正しく断層面解の範囲を限定することに成功したと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ステップ1で実施した研究が,予想以上にうまくいったというのが実際のところである。研究を実施した期間が,海外学振を利用して海外の研究機関に滞在しており,研究に集中できる環境であったことも多い。また,本研究の重要性を十分に理解し,異分野の融合に柔軟な理解を示す研究者が多く周囲にいたこともステップ1を加速させた原因であろう。
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画で説明したステップ2,3を実施する。 2 地震波形データ+既存き裂統計モデル 期間: H31年1月~H31年10月: 微小地震の多くは既存き裂から発生する為,ボアホール 検層から得られる既存き裂分布を事前情報として,フィールドに存在する既存き裂の統計モデルを作成する。これと観測点の押し引き極性情報によって求められたき裂面の向きを 融合させる事によって,き裂面の向きを絞り込む。 3 地震波形データ+地殻応力+既存き裂統計モデル 期間: H31年11月~H32年3月: 1と2で用いた地殻応力・既存き裂統計モデルを 同時に使用し,押し引き極性情報によって求められたき裂面の向きと融合させ,き裂面の向きを最大限絞り込む。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究ステップ1が予想以上にうまくいったため,当初予定していた海外の研究機関訪問し,議論するプロセスを省略できた為,次年度使用額が生じた。次年度使用額は,次年度の研究成果を公表するための学会参加,海外の研究機関滞在費として使用する予定である。
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