本研究を構成する3ステップのうち,初年度のステップ1の成功を受けて,次年度は以下のステップ2と3を実施した。 ステップ2 地震波形データ+既存き裂統計モデル 期間: H31年1月~H31年10月: 微小地震の多くは既存き裂から発生する為,ボアホール検層から得られる既 存き裂分布を事前情報として,フィールドに存在する既存き裂の統計モデルを作成する (Fig. 5b)。これと観測点の押し引き極性情報によって求められたき裂面の向き(Fig. 5a)を 融合させる事によって,き裂面の向きを絞り込む。 ステップ3 地震波形データ+地殻応力+既存き裂統計モデル 期間: H31年11月~H32年3月: 1と2で用いた地殻応力・既存き裂統計モデルを同時に使用し,押し引き極性情報によって求められたき裂面の向きと融合させ,き裂面の向きを最大限絞り込む。 上記コンセプトを実現するためのプログラムを実装し,実フィールドデータを用いて本手法の有効性を検証した。既存き裂情報は,ステップ1で使用した地殻応力情報よりも拘束力が弱いが,膨大な量の断層面解の解を限定するには有効であることがわかった。残念ながらステップ3で地殻応力情報を導入しても,その結果は単純に地殻応力情報を用いたステップ1と大差なかった。よって,地殻応力情報はき裂方向を限定するのにかなり有効である。しかし,地殻応力情報がえられるのは稀であり,その場合は既存き裂情報のような,他の検層から得られた情報を有効に使うことが有益である。
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